ロミデプシンおよびI.A.ボルテゾミブを含む併用療法
本発明は、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを含む、癌およびその他の新生物を処置するための併用療法を提供する。ロミデプシンとプロテアソームインヒビター(例えば、ボルテゾミブ)を組み合わせて投与すると、その両者は相乗的に相互作用して、低濃度(ナノモル)で悪性細胞を選択的に死滅させる。この作用は、悪性の血液系細胞(例えば、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫など)において特に顕著である。また、この組み合わせは、ボルテゾミブ抵抗性癌およびステロイド抵抗性癌の処置にも有効であることが分かっている。本発明は、インビトロおよびインビボにおいて悪性細胞を死滅させる方法を提供する。また、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを含む医薬組成物、調製物、およびキットも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、米国特許法第119条第e項の下、2007年1月23日に出願された米国仮出願第60/886,169号、および2007年12月7日に出願された同第61/005,774号に優先権の主張をしており、それらの各々を参照として本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
ロミデプシンは、藤沢薬品によってクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)から単離された天然物である。特許文献1;1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号参照。これらは、参照されて本明細書に組み込まれる。ロミデプシンは、4個のアミノ酸残基(D−バリン、D−システイン、デヒドロブチリン、およびL−バリン)および新規の酸(3−ヒドロキシ−7−メルカプト−4−ヘプテン酸)からなる二環式ペプチドである。ロミデプシンは、アミド結合およびエステル結合を含むデプシペプチドである。ロミデプシンは、C.ビオラセウムからの発酵処理によるだけでなく、合成手段または半合成手段によっても調製することができる。Kahnらによって報告されたロミデプシンの全合成は14の工程を含み、18%の全収率でロミデプシンが得られる。非特許文献1。ロミデプシンの構造を以下に示す:
【0003】
【化1】
【0004】
。
ロミデプシンには、抗菌活性、免疫抑制活性、および抗腫瘍活性があることが分かっている。これは、抗癌治療を開発する上で有望になった新たな標的である脱アセチル化酵素(例えば、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、チューブリン脱アセチル化酵素(TDAC))を選択的に阻害することによって作用すると考えられている。非特許文献2。一つの作用機序は、一種類以上のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することを含むと考えられる。
【0005】
ヒストン脱アセチル化酵素は、その活性部位に亜鉛を有するメタロ脱アセチル化酵素である。非特許文献3。この酵素は、ヒストンのアセチル化を促すことによって遺伝子発現を調節し、それによって、クロマチンの弛緩を誘導し、また、普遍的ではないが、一般的に、転写の活性化を誘導すると考えられている。これらの酵素はHDACとして知られているが、その他の多様な細胞過程にも関与するとされてきた。例えば、HDACインヒビターは、デスレセプター(death receptor)の上方制御、Bid切断、ROS産生、Hsp90の調節異常、およびとりわけセラミド産生など、多様なメカニズムを介して腫瘍性の細胞におけるアポトーシスを開始させることが分かっている。いくつかのHDACインヒビターは、臨床の活舞台(clinical arena)に入っており、血液系悪性腫瘍(hematologic malignancy)および非血液系悪性腫瘍の両方において活性を示している。ロミデプシンは、ある血液系悪性腫瘍、特にT細胞リンパ腫において目覚しい活性を示している(非特許文献4;これは参照されて本明細書に組み込まれる)。
【0006】
ロミデプシン以外にも、さまざまな誘導体も調製されて研究されている。次の特許および特許出願には、ロミデプシンの多様な誘導体が記載されている:米国特許第6,548,479号;特許文献2;特許文献3;および特許文献4;これらはそれぞれ参照されて本明細書に組み込まれる。
【0007】
プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブ(登録商標VELCADE)は、26Sプロテアソームの触媒ユニットの強力な阻害剤である。これは、さまざまな腫瘍性の細胞株においてアポトーシスを誘導する一方で、正常な細胞に対しては比較的低い毒性を及ぼすのみである。ボルテゾミブの致死性のメカニズムは明確には知られていないが、とりわけ、NF−κBインヒビターであるIκBαのプロテアソーム分解からの回避に伴う二次的なNF−κBの阻害に因るものとされている。ボルテゾミブは、多発性骨髄腫において高い活性を示し、標準的な治療では治療が難しい骨髄腫患者における使用が認められている。最近の研究で、これがマントル細胞リンパ腫など、非ホジキンリンパ腫のいくつかの型に対しても活性を示すと考えられることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許出願公開平7−64872号(1995年)
【特許文献2】国際公開第05/0209134号パンフレット
【特許文献3】国際公開第05/058298号パンフレット
【特許文献4】国際公開第06/129105号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc. 118:7237−7238,1996
【非特許文献2】Nakajimaら、Experimental Cell Res.241:126−133,1998
【非特許文献3】Finninら、Nature,401:188−193,1999
【非特許文献4】Piekarzら、“A review of depsipeptide and other histone deacetylase inhibitors in clinical trials”Curr.Pharm.Des.10:2289−98,2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビター(例えば、ボルテゾミブ)を組み合わせる、癌およびその他の新生物などの増殖性疾患の処置を提供する。本発明は、これらの医薬の両方を一緒に投与すると、これら2つの医薬の間に予想外の相乗効果が見られることが分かったために生まれたものである。すなわち、これら2つの薬を、各薬剤を個別に使用するときに通常用いるよりも少ない用量で投与しても、被検体の癌またはその他の新生物を処置するのに依然として有効でありえる。この相乗効果は、血液系細胞の悪性腫瘍を処置する場合に特に顕著である。例えば、多発性骨髄腫および慢性リンパ球性白血病(CLL)の処置において特に効果的な組み合わせが本明細書に示されている。ある実施形態において、このような低用量の組み合わせは、正常な細胞よりも腫瘍性の細胞に対して細胞傷害性が高い。本発明の併用療法は、難治性および/または再発性の癌(例えば、ボルテゾミブ抵抗性の癌、ステロイド抵抗性の癌)の処置において特に有用であることが分かっている。本発明は、本発明の薬剤の組み合わせて使用する方法を提供するだけでなく、本発明の組み合わせを含む医薬組成物およびキットも含む。
【0011】
一つの局面において、本発明は、被検体に治療上有効な量のロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを投与することによって、その被検体(例えば、ヒト)の癌を処置する方法を提供する。ある実施形態において、この組み合わせはロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。これらの薬剤はいずれも、癌を患うヒト被検体を処置するために、臨床上利用されてきたものである。ある実施形態において、ロミデプシンおよびボルテゾミブを、それぞれ個別に使用する場合よりも低い投与量で組み合わせて使用することできる。別の実施形態において、この組み合わせの相加的な性質が、癌またはその他の新生物を処置するのに特に有用である。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から15mg/m2の用量で、ボルテゾミブは、0.1mg/m2から5mg/m2の用量で投与される。これら2つの薬は一緒に投与しても、一つずつ投与してもよい。本方法は、血液系悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、CLL)を処置するのに特に有用である。ある実施形態において、癌はボルテゾミブに対して抵抗性を示す。ある実施形態において、癌はステロイド処置に対して抵抗性を示す。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは、別の抗新生物剤またはステロイド剤とともに投与される。一つの具体的な実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは、ステロイド剤(例えば、プレドニソロン、デキサメタゾン)とともに投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、0.25mg〜100mg、または5mg〜60mg、もしくは10mg〜50mgの範囲の用量で投与される。具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約40mgの用量で投与される。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約20mgの用量で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは静脈内投与される。ある実施形態において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターのそれぞれを2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与し、プロテアソームインヒビターを週2回投与する。ある実施形態において、ステロイド剤は、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターと一緒に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する5〜7日前に投与してもよい。
【0012】
別の局面において、本発明は、多発性骨髄腫を患う被検体に、治療上有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与して、被検体(例えば、ヒト)の多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。ある実施形態において、ロミデプシンの治療上有効な量の範囲は、4mg/m2から15mg/m2または8mg/m2から10mg/m2である。ある実施形態において、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量の範囲は、0.5mg/m2から3mg/m2である。ある実施形態において、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量は約1.3mg/m2である。ある実施形態において、ロミデプシンの治療上有効な量の範囲は8mg/m2から10mg/m2であり、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量は約1.3mg/m2である。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与し、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を週2回投与する。いくつかの実施形態において、ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)は、ステロイド剤(例えば、プレドニソロン、デキサメタゾン)とともに投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、0.25mg〜100mg、または5mg〜60mg、または10mg〜50mgの範囲の用量で投与される。具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約40mgの用量で投与される。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約20mgの用量で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)と一緒に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する5〜7日前に投与してもよい。
【0013】
別の局面において、本発明は、細胞を、ロミデプシンと、ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターとの組み合わせに接触させることによって、細胞をインビトロで処置する方法を提供する。細胞は、処置する細胞を死滅させるのに十分な濃度の該組み合わせによって処置することができる。ある実施形態において、アポトーシスの細胞内マーカーのレベルが変化することで明らかに示されるようにアポトーシスを誘導するのに十分な濃度の組み合わせが使用される。ある実施形態において、細胞は腫瘍性の細胞である。この細胞は、ヒト癌由来のものであっても、癌細胞株(例えば、多発性骨髄腫、CLL)由来のものであってもよい。ある実施形態において、細胞は血液系細胞、具体的には白血球細胞(例えば、T細胞、B細胞、形質細胞など)である。ある実施形態において、細胞は、B細胞またはT細胞などのリンパ球である。ある実施形態において、細胞は形質細胞である。細胞は、如何なる分化または発達の段階にあってもよい。ある実施形態において、細胞は、ボルテゾミブに対して抵抗性を示す。ある実施形態において、細胞は、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニソロンなど)に対して抵抗性を示す。本方法は、ある条件下(例えば、各薬剤の濃度、他の医薬との組み合わせ)で、ある組み合わせの細胞傷害性を評価するのに特に有用である。本発明の方法を利用して、併用療法に対する被検体の癌または新生物の感受性を確認することができる。また、本発明の組み合わせを利用して、細胞内におけるJNK経路を活性化させたり、細胞内におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質またはその他の抗アポトーシスタンパク質を下方制御したり、および/または細胞内におけるカスパーゼ−12の切断を誘導したりすることもできる。本発明の組み合わせによる、このような細胞経路の調節は、臨床目的のためであっても、研究目的のためであってもよい。
【0014】
さらに別の局面において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを含む医薬組成物または調製物が提供される。ある具体的な実施形態において、この組成物または調製物は、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。この医薬組成物は、癌(例えば、多発性骨髄腫、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫、CLL)を処置するために治療上有効な量の各薬剤を含む。これらの医薬を組み合わせて投与すると相乗作用があるため、これらの薬剤を個別に送達する場合よりも各々の薬剤の量を少なくすることができる。この医薬組成物は、他の細胞傷害性薬剤または抗腫瘍性剤を含むことが可能である。この医薬組成物は、疼痛、悪心、脱毛、体重減少、体重増加、神経障害、不整脈、電解質欠乏症または平衡失調、貧血、血小板減少症、免疫抑制、皮膚症状、または癌もしくは癌処置に付随するその他の症状を緩和させるために、その他の薬剤も含むことができる。また、本発明は、便利な投薬形態にした本発明の医薬組成物を含むキットも提供する。薬剤は、キットの中で一緒に包装されていても、個別包装されていてもよい。このキットは、複数回投与用量分の各薬剤を含んでいてもよい。ある実施形態において、本キットは、被検体の癌の処置における化学療法の全コースを行うのに十分な量の各薬剤を含む。また、本キットは、本発明の組み合わせを投与するための賦形剤または装置を含むこともできる。本キットは、本発明の組み合わせを投与する上での説明書を含むこともできる。
(定義)
本明細書全体を通じて使用されているその他の用語の定義には以下のものがある:
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の記載がない限り、複数形への言及も含む。従って、例えば、「一つの細胞(a cell)」という場合には、そのような細胞が複数の場合も含む。
【0015】
「動物」:本明細書において用いる場合、「動物」という用語は、動物界の任意のものを意味する。いくつかの実施形態において、「動物」は、ヒトを意味し、如何なる発育段階にあってもよい。いくつかの実施形態において、「動物」は、ヒト以外の動物を意味し、如何なる発育段階にあってもよい。いくつかの実施形態において、動物とは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、および/またはワーム(worm)などであるが、それらに限定されない。ある実施形態において、ヒト以外の動物は哺乳動物(例えば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物はトランスジェニック動物、遺伝子改変動物、および/またはクローンであってもよい。
【0016】
「デプシペプチド」:「デプシペプチド」という用語は、本明細書において用いる場合、エステル結合とアミド結合の両方を含むポリペプチドを意味する。天然型デプシペプチドは、通常は環状である。いくつかのデプシペプチドは、強力な抗生物質活性をもつことが分かっている。デプシペプチドの例は、アクチノマイシン、エンニアチン、バリノマイシン、およびロミデプシンなどである。
【0017】
「有効量」:一般的には、ある活性薬剤、または薬剤を組み合わせしたものの「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発させるのに十分な量を意味する。当業者には理解されるように、本発明の組み合わせの有効量は、所望の生物的エンドポイント、送達されている薬剤の薬物動態、処置される疾患、投与方法、および患者などの因子に応じて変えることができる。例えば、本発明の組み合わせ(例えば、ロミデプシンおよびボルテゾミブ)の有効量とは、腫瘍負荷を軽減させたり、寛解を生じさせたり、患者を治癒させたりという結果をもたらす量のことである。
【0018】
「ペプチド」または「タンパク質」:本発明では、「ペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結した少なくとも3個のアミノ酸のつながりを含む。「タンパク質」または「ペプチド」という用語は、同義的に使用することができる。ペプチドは、好ましくは、天然型アミノ酸のみを含むが、当技術分野において知られている非天然型アミノ酸(すなわち、天然には存在しないが、ポリペプチド鎖に取り込むことができる化合物)および/またはアミノ酸類似体を代替的に用いることも可能である。また、ペプチド中のアミノ酸の一つ以上を、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、共役、機能付加、またはその他の改変を行うためのリンカーなどの化学物質を付加することによって改変することもできる。ある実施形態において、ペプチドの改変は、より安定したペプチド(例えば、インビボにおける半減期の延長)をもたらすことができる。これらの改変には、ペプチドの環化、D−アミノ酸の取り込みなどが含まれる。これらの改変はいずれも、そのペプチドの所望の生物学的活性を実質的に阻害するものであるべきではない。ある実施形態において、ペプチドはデプシペプチドを意味する。
【0019】
「ロミデプシン」:「ロミデプシン」という用語は、以下の化学構造をもつ天然物を意味する:
【0020】
【化2】
【0021】
。
ロミデプシンは脱アセチル化酵素インヒビターであり、FK228、FR901228、NSC630176、またはデプシペプチドという名前でも当技術分野において知られている。ロミデプシンの同定および調製については、1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号に記載されており、これは参照されて本明細書に組み込まれる。この分子式はC24H36N4O6S2であり、分子量は540.71g/molである。ロミデプシンの化学名は(1S、4S、10S、16E,21R)−7−[(2Z)−エチリデン]−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタノンである。ロミデプシンは、128517−07−7というCAS番号を割り当てられている。ロミデプシンは、結晶状態では、一般的には白色から淡黄白色の結晶または結晶性粉末である。「ロミデプシン」という用語には、この化合物およびその任意の医薬物形態が含まれる。ある実施形態において、「ロミデプシン」という用語は、その塩、プロドラッグ、エステル、保護型、還元型、酸化型、異性体、立体異性体(例えば、鏡像変異体、ジアステレオマー)、互変異性体、および誘導体も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】登録商標VELCADE(ボルテゾミブ)は、ヒト多発性骨髄腫細胞において、デプシペプチドによって誘導されるアポトーシスを顕著に増強する。ヒト骨髄腫のU266細胞およびRPMI8226細胞を、3〜4nMのボルテゾミブの非存在下または存在下で、2〜3nMのロミデプシンFK288に48時間曝露し、その後、フローサイトメトリーによって、アネキシンV+(アポトーシス)細胞の割合を測定した。その結果、ボルテゾミブおよびロミデプシンは、低い(ナノモル)濃度で投与されると相乗的に相互作用して、ヒト多発性骨髄腫細胞株においてアポトーシスを誘導する。
【図2】ロミデプシン(FK288)およびボルテゾミブは、CD138+初代ヒト骨髄多発性骨髄腫細胞において相乗的に相互作用するが、その対応する正常CD138−細胞においてはそのように作用しない。初代CD138+骨髄腫細胞を、多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルから単離した。そして、CD138+細胞およびCD138−細胞を、3nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、3nMのロミデプシンによって24時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを測定した。ボルテゾミブおよびロミデプシンは、低い(ナノモル)濃度で投与されると、高度に相乗的に相互作用して初代ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを誘導するが、正常な骨髄細胞には何もしないため、このことが治療選択性の根拠となる可能性を示唆している。
【図3】ロミデプシン(FK288)/ボルテゾミブ(Btzmb)は、ステロイド抵抗性ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを相乗的に誘導する。デキサメタゾン感受性ヒト骨髄腫細胞(MM.1S)およびデキサメタゾン抵抗性ヒト骨髄腫細胞(MM.1R)を、2nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、1nMのロミデプシンに24時間曝露し、その後、フローサイトメトリーによって、アネキシンV+(アポトーシス)細胞の割合を測定した。その結果、これら2つの薬を低い(ナノモル)濃度で投与すると、ロミデプシンが、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫細胞におけるボルテゾミブの致死性を増強させることが明らかになった。
【図4】ロミデプシン(FK288)は、ボルテゾミブ抵抗性のU266多発性骨髄腫細胞におけるボルテゾミブの致死性を高める。ボルテゾミブ抵抗性細胞(U266/PS−R)を、ボルテゾミブの濃度を徐々に上げ、12nMの濃度に達するまで上昇させながらU266細胞を培養することによって作製した。U266/PS−R細胞を、5〜15nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、2nMのロミデプシンにより48時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。ロミデプシンが、ボルテゾミブのみに抵抗性を示す多発性骨髄腫細胞においてボルテゾミブの致死性を増強させることが明らかになった。
【図5】ロミデプシン(FK288)とボルテゾミブの組み合わせは、ヒト骨髄腫細胞においてストレス関連キナーゼJNKの活性化およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の下方制御を誘導する。ヒト多発性骨髄腫(U266)細胞を、3nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、2nMのロミデプシンに48時間曝露し、その後、イムノブロット解析を実施してJNK活性化(A)およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の発現(B)をモニターした。ヒト多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの間の相乗的相互作用は、ストレス関連JNK経路の活性化、およびいくつかのNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、およびXIAP)の下方制御を伴っている。
【図6】低濃度(3nM)で投与されるボルテゾミブ(Btzmb)およびロミデプシン(FK288)による組み合わせ処置は、初代CLL細胞においてアポトーシスおよびカスパーゼ−12切断を強力に誘導する。ロミデプシンおよびボルテゾミブは、ERストレスに関係する可能性のある過程を介して、患者由来の初代CLL細胞において相乗的に相互作用する。
【図7】ロミデプシン(FK288)とともに、またはそれがないところで、ボルテゾミブ(Btzmb)に曝露されたCLL細胞の顕微鏡写真(100×)。各処置(それぞれ3nM;24時間)は比較的非毒性であるが、組み合わせ処置はアポトーシス細胞を顕著に増加させている。
【図8】JVM−3CLL細胞株およびMEC−2(プロリンパ芽球性)CLL細胞株におけるロミデプシン(FK228)/ボルテゾミブの相互作用(48時間)。いずれの場合にも、細胞死の相乗的誘導が見られる。
【図9】初代CLL細胞を、ロミデプシン(FK288)とともに、またはそれがないところで、ボルテゾミブ(Btzmb)(それぞれ3nM)に24時間曝露し、その後ウエスタンブロット解析法を用いて、さまざまなアポトーシス調節タンパク質の発現をモニターした。ボルテゾミブおよびロミデプシンによる初代CLL細胞の組み合わせ処置は、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPなどの抗アポトーシスタンパク質の発現を顕著に減少させる。
【図10】臨床試験デザイン。臨床試験は、再発性または難治性の多発性骨髄腫を患う患者におけるボルテゾミブ、デキサメタゾン、およびロミデプシンの非盲検、単一施設、単一群、第I/II相の用量漸増試験の後、病勢悪化までロミデプシン維持治療を行うものであった。
【図11】各患者の処置曝露の結果をまとめたグラフの一例を示す。
【図12】最終処置用量レベルの分布を示す。用量レベル2が、ほとんどの患者にとって最終処置用量レベルである。
【図13】患者における血小板減少症の動態の一例を示す。
【図14】患者間における最良の応答結果をまとめたグラフである。免疫固定法陰性で完全寛解(CR)した者が1人、部分寛解(PR)した者が6人、またやや寛解(MR)した者が1人いた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターを組み合わせて投与することで増殖性疾患を処置するための新規のシステムを提供する。これらの薬剤の組み合わせは相加的効果または相乗的効果をもたらすことができる。ある実施形態において、癌またはその他の新生物の処置において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの間に相乗的相互作用があることが、本明細書に記載されているように実証されている。図1〜9参照。この相乗効果は、悪性の血液系細胞、具体的には白血球細胞(例えば、白血病細胞、リンパ腫細胞、および骨髄腫細胞)の場合に特に顕著である。如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、この効果は、薬剤の組み合わせによって、ミトコンドリア損傷および/または活性酸素種(ROS)生成の誘導と連携してアポトーシスの相乗的誘導に起因し得る。
【0024】
一つの仮説は、ロミデプシンによるHDAC6インヒビターが介在するアセチル化によって生じるHsp90機能およびダイニン機能の干渉によって、タンパク質のミスフォールディングおよびアグリソームの機能障害がもたらされ、その結果、プロテアソームの阻害と連動してアポトーシスの増強が生じるというものである。二番目の仮説は、NK−κB機能の干渉が、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの組み合わせによる相乗作用に寄与している可能性があるというものである。HDACインヒビターが介在するp65/RelAのアセチル化によって、NF−κBの活性化がもたらされ、HDACインヒビターによって誘導されるROSの生成および致死性を促進する。ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターは、同様の作用をすると考えられている。
【0025】
ロミデプシンも、ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターも、腫瘍性の細胞を選択的に標的とし、酸化的傷害を誘導して腫瘍性の細胞を死滅させ、また、相乗的に作用して、悪性細胞におけるアポトーシスを誘導することができるため、ロミデプシンと、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブとの組み合わせが癌の処置に有用であるかを試験したところ、本明細書に記載したように特に有効であることが分かった。ロミデプシンとボルテゾミブとの組み合わせは、悪性の血液系細胞を処置するのに特に有用であることが分かっている。本発明の組み合わせは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびその他の血液系悪性腫瘍を処置するのに有用である。また、本発明の組み合わせは、薬剤抵抗性を示す悪性腫瘍、例えば、ボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫、およびステロイド抵抗性の悪性腫瘍、例えばデキサメタゾン抵抗性多発性骨髄腫を処置するのにも有用であることが分かっている。
【0026】
これらの発見の基づき、本発明は、インビトロおよびインビボの両方において、本発明の組み合わせによって細胞を処置する方法を提供する。また、本発明は、本発明の組み合わせを含む医薬組成物およびキットも提供する。ある具体的な実施形態において、本発明の組み合わせはロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。
ロミデプシン
ロミデプシンは以下の化学式をもつ環状デプシペプチドである:
【0027】
【化3】
【0028】
。
ロミデプシンは任意の形状で提供することができる。薬学的に許容される形状が特に好適である。ロミデプシンの形状の例には、所望の活性(例えば、脱アセチル化酵素阻害活性、アグリソーム阻害、細胞傷害性)を有する塩、エステル、プロドラッグ、異性体、立体異性体(例えば、鏡像変異体、ジアステレオマー)、互変異性体、保護型、還元型、酸化型、誘導体、およびそれらを組み合わせたものが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、併用療法に使用されるロミデプシンは、医薬品等級の物質であり、かつ、米国薬局方、日本薬局方、および欧州薬局方の基準を満たすものである。ある実施形態において、ロミデプシンは、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%である。ある実施形態において、ロミデプシンは、純度が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%のモノマーである。ある実施形態において、ロミデプシンの材料(例えば、酸化された材料、還元された材料、二量体またはオリゴマーの材料、副生成物など)では、不純物は検出されない。ロミデプシンは、一般的に、全体のその他未知物質を1.0%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満含む。ロミデプシンの純度は、外観、HPLC法、比旋光度法、NMR分光法、IR分光法、紫外・可視分光法、粉末X線回折(XRPD)解析法、元素分析法、LC−質量分析法、および質量分析法によって評価することができる。
【0029】
本発明の併用療法は、ロミデプシンの誘導体を含むこともできる。ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(I)のものである:
【0030】
【化4】
【0031】
ただし、式中、
mは1、2、3、または4であり;
nは0、1、2、または3であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1または2であり;
XはO、NH、またはNR8であり;
R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して水素;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の複素脂肪族化合物;非置換型か置換型のアリール;または非置換型か置換型の複素アリールであり;かつ、
R4、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して水素;または置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;およびその薬学的に許容される形状である。ある実施形態において、mは1である。ある実施形態において、nは1である。ある実施形態において、pは1である。ある実施形態において、qは1である。ある実施形態において、XはOである。ある実施形態において、R1、R2、およびR3は非置換型か置換型、分岐型か非分岐型の非環状脂肪族化合物である。ある実施形態において、R4、R5、R6、およびR7はすべて水素である。
【0032】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(II)のものである:
【0033】
【化5】
【0034】
ただし、式中、
mは1、2、3、または4であり;
nは0、1、2、または3であり;
qは2または3であり;
XはO、NH、またはNR8であり;
YはOR8またはSR8であり;
R2およびR3は、それぞれ独立して水素;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の複素脂肪族(heteroaliphatic)化合物;非置換型か置換型のアリール;または非置換型か置換型の複素アリールであり;
R4、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して、水素;置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;およびその薬学的に許容される形状から選択される。ある実施形態において、mは1である。ある実施形態において、nは1である。ある実施形態において、qは2である。ある実施形態において、XはOである。他の実施形態において、XはNHである。ある実施形態において、R2およびR3は非置換型か置換型、分岐型か非分岐型の非環状脂肪族化合物である。ある実施形態において、R4、R5、R6、およびR7はすべて水素である。
【0035】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(III)のものである:
【0036】
【化6】
【0037】
ただし、式中、
Aは、生理学的条件下で切断されてチオール基を生じる部分であり、例えば、(チオエステル結合を形成するための)脂肪族または芳香族のアシル部分;(ジスルフィド結合を形成するための)脂肪族または芳香族のチオキシなど;およびその薬学的に許容される形状などが挙げられる。そのような脂肪族または芳香族の基には、置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族基;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基(heteroaromatic group);または置換型か非置換型の複素環基などを含み得る。Aは、例えば、−COR1、−SC(=O)−O−R1、または−SR2であってもよい。R1は独立して水素;置換型か非置換型のアミノ;置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基;または置換型か非置換型の複素環基である。ある実施形態において、R1は水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ベンジル、またはブロモベンジルである。R2は、置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族基;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基;または置換型か非置換型の複素環基である。ある実施形態において、R2はメチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、イソブチル、脂肪酸、置換型か非置換型のベンジル、置換型か非置換型のアリール、システイン、ホモシステイン、またはグルタチオンである。
【0038】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(IV)または(IV’)のものである:
【0039】
【化7】
【0040】
ただし、式中、
R1、R2、R3、およびR4は、同一であるか、相異なっており、アミノ酸側鎖部分を表しており、各R6は同一であるか相異なっており、水素またはC1〜C4アルキルを表しており、Pr1およびPr2は、同一であるか相異なっており、水素またはチオール保護基を表している。ある実施形態において、アミノ酸側鎖部分は天然型アミノ酸に由来するものである。別の実施形態において、アミノ酸側鎖部分は非天然型アミノ酸に由来するものである。ある実施形態において、各アミノ酸側鎖は、−H、−C1〜C6アルキル、−C2〜C6アルケニル、−L−O−C(O)−R’、−L−C(O)−O−R”、−L−A、−L−NR”R”、−L−Het−C(O)−Het−R”、および-L−Het−R”から選択された部分である。ただし、LはC1〜C6アルキレン基、Aはフェニルまたは5員もしくは6員の複素アリール基、各R’は同一であるか相異なっていて、C1〜C4アルキルを表し、各R”は同一であるか相異なっていて、HまたはC1〜C6アルキルを表し、各−Het−は同一であるか相異なっていて、−O−、−N(R’’’)−、および−S−から選択される複素原子スペーサーであり、各R’’’は同一であるか相異なっていて、HまたはC1〜C4アルキルを表している。ある実施形態において、R6は−Hである。ある実施形態において、Pr1およびPr2は同一であるか相異なっており、水素、およびC1〜C6アルコキシによって任意で置換されているベンジル基、C1〜C6アシルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、C1〜C6アシルオキシメチル、C1〜C6アルコキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、三級ブトキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体、カルバモイル、フェニルカルバモイル、ならびにC1〜C6アルキルカルバモイルから選択される保護基から選択される。ある実施形態において、Pr1およびPr2は水素である。化学式(IV)および(IV’)をもつ、さまざまなロミデプシン誘導体が、2006年12月7日に公開されたPCT出願国際公開公報第2006/129105号に開示されており;参照されて本明細書に組み込まれる。
【0041】
ロミデプシンを調製する方法は、当技術分野において知られている。例えば、ロミデプシンを調製する方法の例が、2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,698号;2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,704号;および2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,712号に記載されおり、その教示内容は、すべて参照されて本明細書に組み込まれる。ロミデプシンは天然産物であるため、一般的には、これを産生する微生物の発酵物から、これを単離して調製する。ある実施形態において、ロミデプシンまたはその誘導体を、例えば、クロモバクテリウム・ビオラセウムの発酵物から精製する。例えば、Uedaら、J.Antibiot.(Tokyo)47:301−310,1994;Nakajimaら、Exp.Cell Res.241:126−133,1998;国際公開公報第02/20817号;米国特許第4,977,138号参照;これらは、それぞれ参照されて本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、ロミデプシンまたはその誘導体は、合成法または半合成法によって調製される。J.Am.Chem.Soc.118:7237−7238,1996;これは、参照されて本明細書に組み込まれる。
【0042】
併用療法に含まれるロミデプシンの治療上有効な量は、患者、処置対象となっている癌または新生物、癌の病期、癌または新生物の病態、癌または新生物の遺伝子型、癌または腫瘍の表現型、投与経路などに応じて変わる。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜28mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜25mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜8mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜5mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、2mg/m2〜10mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、4mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、8mg/m2〜10mg/m2の範囲で投与される。別の実施形態において、投薬量は、10mg/m2〜20mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、5mg/m2〜10mg/m2の範囲である。別の実施形態において、投薬量は、10mg/m2〜15mg/m2の範囲である。さらに別の実施形態において、投薬量は約8mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約9mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約10mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約11mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約12mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約13mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約14mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約15mg/m2である。ある実施形態において、投薬サイクルの間、ロミデプシンの用量を増加させて投与する。例えば、ある実施形態において、約8mg/m2の用量、その後、約10mg/m2の用量、その後、約12mg/m2の用量を1サイクル(a cycle)の間に投与してもよい。当業者には理解されるが、投与されるロミデプシンの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載されている投薬量は、活性成分であるロミデプシンについての等価用量である。当業者には理解されるが、一層多くの塩、水和物、共結晶、プロドラッグ、エステル、溶質などを投与して、等価数のロミデプシン分子を送達する必要があり得る。ある実施形態において、ロミデプシンを静脈内に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを1〜6時間かけて静脈内に投与する。ある具体的な実施形態において、ロミデプシンを3〜4時間かけて静脈内に投与する。ある具体的な実施形態において、ロミデプシンを5〜6時間かけて静脈内に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを1日投与し、その後数日間ロミデプシンを投与しない。ある実施形態において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターは一緒に投与される。別の実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは別々に投与される。例えば、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与は、一日以上の間隔を置くことができる。ある実施形態において、ロミデプシンを週2回投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与する。別の実施形態において、ロミデプシンを2週間に1回に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に投与する。ある具体的な実施形態において、8mg/m2の用量のロミデプシンを1日目に投与し、10mg/m2の用量のロミデプシンを8日目に投与し、12mg/m2の用量のロミデプシンを15日目に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを28日サイクルの1日目および15日目に投与する。この28日サイクルを反復することができる。ある実施形態において、28日サイクルを3〜10回反復する。ある実施形態において、処置は5サイクルを含む。ある実施形態において、処置は6サイクルを含む。ある実施形態において、処置は7サイクルを含む。ある実施形態において、処置は8サイクルを含む。ある実施形態において、10サイクルよりも多く投与される。ある実施形態において、患者が応答している限り、サイクルを続ける。疾患の進行が見られたり、治癒または寛解が達成されたり、副作用が許容できなくなったりしたところで、この治療を終わらせることができる。
【0043】
あるいは、ロミデプシンは経口投与することができる。ある実施形態において、ロミデプシンは、10mg/m2〜300mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、25mg/m2〜100mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、100mg/m2〜200mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、200mg/m2〜300mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは300mg/m2を超えて経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、50mg/m2〜150mg/m2の範囲で経口投与される。別の実施形態において、経口投与量の範囲は、25mg/m2〜75mg/m2である。当業者には理解されるが、投与されるロミデプシンの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載されている投薬量は、活性成分であるロミデプシンについての等価用量である。ある実施形態において、ロミデプシンは、1日1回ずつ経口投与される。別の実施形態において、ロミデプシンは、1日おきに経口投与される。さらに別の実施形態において、ロミデプシンは、3日おき、4日おき、5日おき、または6日おきに経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは週に1回ずつ経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは2週間に1回に経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは一緒に投与される。別の実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは別々に投与される。例えば、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与は、一日以上の間隔を置くことができる。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターはともに経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンだけが経口投与される。疾患の進行が見られたり、治癒または寛解が達成されたり、副作用が許容できなくなったりしたところで、ロミデプシンの単独投与、またはロミデプシンとプロテアソームインヒビターの組み合わせの投与を終わらせることができる。
プロテアソームインヒビター
プロテアソームは、ほとんどの細胞基質、小胞体、および核タンパク質を分解する多サブユニットプロテアーゼである。KisselevおよびGoldberg、“Proteasome inhibitors: from research tools to drug candidates” Chem.Biol.8:739−58,2001;これは参照されて本明細書に組み込まれる。ユビキチン標識されたタンパク質は折りたたまれずに、さまざまなタンパク質分解活性部位を有するプロテアソームの中心部を通って食される。
【0044】
癌またはその他の新生物の処置において、任意のプロテアソームインヒビターをロミデプシンと組み合わせることができる。プロテアソームインヒビターは、一般的に、ロミデプシンと相乗的に、または相加的に相互作用して、腫瘍性の細胞または悪性細胞を死滅させる。相乗作用があれば、癌または別の新生物の処置においてプロテアソームインヒビターを単独で投与する場合に通常使用されるよりも低用量のプロテアソームインヒビターの使用が可能になる。ある実施形態において、プロテアソームインヒビターは、ロミデプシンと相乗的に相互作用して、腫瘍性の細胞または悪性細胞においてアポトーシスを誘導することができる。ある実施形態において、この組み合わせが相乗的に作用して酸化的傷害を誘導する。
【0045】
プロテアソームインヒビターの例には、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI−0052)、ラクタシスチン、エポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)、MG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)、PR−171、PS−519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP−1612、CVT−63417、PS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)、PSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)、MG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)、PS−273(MNLB)、オムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)、NLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)、YLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)、ALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)、3,4−ジクロロイソクマリン、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド、TMC−95A、グリオトキシン、EGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)、およびYU101(Ac−hFLFL−ex)などが含まれる。ある実施形態において、ロミデプシンをボルテゾミブ(登録商標VELCADE)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをサリノスポラミドA(NPI−0052)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをラクタシスチンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをエポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをMG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPR−171と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−519と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをエポネマイシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをアクラシノマイシンAと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをCEP−1612と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをCVT−63417と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをMG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−273(MNLB)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをオムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをNLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−273(MNLB)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをYLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをジヒドロエポネマイシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをDFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンを3,4−ジクロロイソクマリンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンを4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリドと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをTMC−95Aと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをグリオトキシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをEGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをYU101(Ac−hFLFL−ex)と組み合わせる。
【0046】
ある具体的な実施形態において、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブをロミデプシンと組み合わせる。ボルテゾミブは、[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸という化学名をもち、次の化学式からなる:
【0047】
【化8】
【0048】
。
ボルテゾミブは、ロミデプシンと同時に、ロミデプシンに続いて、またはロミデプシンの前に投与することができる。ボルテゾミブは、一般的には、静脈内ボーラスとして非経口的に投与される。ある実施形態において、ボルテゾミブの投薬量は、0.1〜10mg/m2の範囲である。ある実施形態において、ボルテゾミブの投薬量は、0.1〜5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、1〜5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.1〜1mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜1.5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜1.0mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜3.0mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は約0.7mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約0.8mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約0.9mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約1.0mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.1mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.2mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.3mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.4mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.5mg/m2である。当業者には理解されるが、投与されるボルテゾミブの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載された投薬量は、活性成分であるボルテゾミブについて等価用量である。一般的には、ボルテゾミブを投与した後には、休止期間をおく。休止期間は2日から14日でよい。ある実施形態において、休止期間は少なくとも24時間、48時間、または72時間である。ある実施形態において、休止期間は1週間である。ある実施形態において、ボルテゾミブを2週間に1回に投与する。ある実施形態において、ボルテゾミブを週1回投与する。ある具体的な実施形態において、ボルテゾミブを週1回ずつ4週間投与する。別の実施形態において、ボルテゾミブを週2回投与する。ある実施形態において、ボルテゾミブを、週2回ずつ2週間(1日目、4日目、8日目、および11日目に)投与し、その後、10日間の休止期間をおく。ある実施形態において、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目にボルテゾミブを投与する。処置サイクルは、3週間から10週間の範囲とすることができる。ある実施形態において、処置サイクルは3週間である。別の実施形態において、処置サイクルは4週間である。別の実施形態において、処置サイクルは5週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは6週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは7週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは8週間である。ある実施形態において、患者が応答するかぎり処置サイクルを継続する。疾患の進行がみられたり、治癒または寛解が達成されたり、または副作用が許容できなくなったりしたところで、処置を終わらせることができる。
抗腫瘍性剤およびステロイド剤
本発明に適する抗腫瘍性剤には、悪性細胞の成熟および増殖を抑制して、新生物の増殖を阻害または防止する薬剤などがある。増殖阻害は、腫瘍性の細胞の静止または細胞死を誘導することによって生じさせることができる。一般的には、抗腫瘍性剤は、通常の細胞傷害性剤などである。抗腫瘍性剤の例には、サイトカイン、リガンド、抗体、放射性核種、および化学療法剤などがあるが、これらに限定されない。具体的には、そのような薬剤は、インターロイキン2(IL−2)、インターフェロン(IFN)TNF;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホン酸、ヘマトポルフィリン、およびフタロシアニンなどの光増感剤;ヨウ素−131(131I)、イットリウム−90(90Y)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、テクネチウム−99m(99mTc)、レニウム−186(186Re)、およびレニウム−188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチン、およびカルボプラチンなどの化学療法剤;ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリン−A毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンAおよび天然リシンA)、TGF−アルファ毒素、中国コブラ(台湾コブラ)由来の細胞毒、およびゲロニン(植物毒素)などの細菌性、植物性、またはその他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サボンソウ(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)、およびRNA分解酵素など、植物、細菌および真菌に由来するリボソーム不活性化タンパク質;、チロシンキナーゼインヒビター;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);抗腫瘍性剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサートなど)を含有するリポソーム;ならびにその他の抗体または抗体断片、例えば、F(ab)などが挙げられる。
【0049】
本発明に適するステロイド剤の例には、ジプロピオン酸アルクロメタゾン(alclometasone diproprionate)、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone diproprionate)、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン(betamethasone diproprionate)、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、またはその合成アナログ、もしくはそれらを組み合わせしたものなどがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明に適したステロイド剤は、デキサメタゾンである。ある実施形態において、本発明に適したステロイド剤は、プレドニゾロンである。
【0050】
ある実施形態において、ステロイド剤を0.25mg〜100mgの投薬量の範囲で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を5mg〜60mgの投薬量の範囲で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を10mg〜50mgの投薬量の範囲で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約40mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約30mgの投薬量で投与する。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤を約20mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約10mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約5mgの投薬量で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターと同時に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する5〜7日前に投与することができる。ある実施形態において、ステロイド剤はデキサメタゾンであり、デキサメタゾンの投与量は20mgである。
用途
ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターの組み合わせは、インビボまたはインビトロで使用することができる。本発明の組み合わせは、インビボにおける新生物の処置において特に有用である。しかし、この組み合わせを、研究目的または臨床目的(例えば、本発明の組み合わせに対する患者の疾患の感受性の測定、作用機序の研究、細胞経路または細胞過程の解明)のためにインビトロで利用することもできる。ある実施形態において、新生物は良性新生物である。別の実施形態において、新生物は悪性新生物である。本発明の組み合わせを使用して、任意の癌を処置することができる。
【0051】
ある実施形態において、悪性腫瘍は血液系悪性腫瘍である。血液系悪性腫瘍は、血液、骨髄、および/またはリンパ節を冒すタイプの癌である。本発明の併用療法を用いて処置することができる悪性腫瘍の例には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T−cell lymphoma)(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、および多発性骨髄腫などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて多発性骨髄腫を処置する。ある具体的な実施形態において、癌は、再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である。別の実施形態では、本発明の組み合わせを用いて、慢性リンパ球性白血病(CLL)を処置する。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置する。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて、急性骨髄性白血病(AML)を処置する。ある実施形態において、癌は皮膚T細胞リンパ腫である。別の実施形態において、癌は末梢T細胞リンパ腫である。
【0052】
血液系悪性腫瘍以外の別の癌も、本発明の組み合わせを使用して処置することができる。ある実施形態において、癌は固形腫瘍である。併用療法を用いて処置することができる癌の例には、結腸癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、脳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、神経内分泌の癌などがあげられる。ある実施形態において、本発明の組み合わせは膵臓癌を処置するために用いられる。ある実施形態において、本発明の組み合わせは前立腺癌を処置するために用いられる。ある具体的な実施形態において、前立腺癌は、ホルモン治療不応性の前立腺癌である。
【0053】
また、併用療法を用いて、難治性または再発性の悪性腫瘍を処置することもできる。ある実施形態において、癌は、難治性および/または再発性の血液系悪性腫瘍である。例えば、癌が特定の化学療法剤に対して抵抗性であってもよい。ある実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の悪性腫瘍である。ある具体的な実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の血液系悪性腫瘍である。ある具体的な実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫である。ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせは、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫のような、ボルテゾミブ抵抗性血液系悪性腫瘍を処置するのに特に有用であることが分かっている。別の実施形態において、癌は、ステロイド処置に対して抵抗性である。ある実施形態において、癌は、ステロイド処置に対して抵抗性を示す血液系悪性腫瘍である。ある実施形態において、癌は、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫である。ある具体的な実施形態において、癌は、デキサメタゾン抵抗性の多発性骨髄腫である。ある具体的な実施形態において、癌は、プレドニゾロン抵抗性の多発性骨髄腫である。
【0054】
また、ロミデプシンにプロテアソームインヒビターを加えた本発明の組み合わせを使用して、インビトロにおいて細胞を処理および/または死滅させることができる。ある実施形態において、細胞を死滅させるために、細胞傷害性濃度の薬剤の組み合わせを細胞に接触させる。別の実施形態において、致死性濃度よりも低い濃度の組み合わせを使用して細胞を処理する。ある実施形態において、薬剤の組み合わせは、相加的に作用して細胞を死滅させる。ある実施形態において、薬剤の組み合わせは、相乗的に作用して、細胞を死滅させる。そのため、細胞を死滅させるためには、どちらかの薬剤を単独で使用した場合に必要とされるよりも低い濃度での一方または両方の薬剤が必要である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、0.01nM〜100nMの範囲である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、0.1nM〜50nMの範囲である。ある実施形態において、ロミデプシンの濃度は、1nM〜10nMの範囲である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、1nM〜10nM、より具体的には1nM〜5nMの範囲である。ある実施形態において、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブの濃度は1nM〜10nM、より具体的には1nM〜5nMの範囲である。
【0055】
併用療法(すなわち、ロミデプシンとプロテアソームインヒビター(例えば、ボルテゾミブ))によって、任意の種類の細胞を試験したり死滅させたりすることができる。細胞は、任意の動物、植物、細菌、または真菌源に由来するものであってもよい。細胞は、どのような分化または成長の段階にあってもよい。ある実施形態において、細胞は動物細胞である。ある実施形態において、細胞は脊椎動物細胞である。ある実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。ある実施形態において、細胞はヒト細胞である。これらの細胞は、任意の成長段階にある男性または女性から得ることができる。ある実施形態において、細胞は霊長動物細胞である。別の実施形態において、細胞は齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ)に由来するものである。ある実施形態において、細胞は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタなどの家畜動物に由来するものである。また、細胞は、遺伝子操作された動物または植物、例えば、トランスジェニックマウスなどに由来するものであってもよい。
【0056】
使用される細胞は、野生型細胞であっても変異型細胞であってもよい。これらの細胞は遺伝子操作されたものであってもよい。ある実施形態において、細胞は正常細胞である。ある実施形態において、細胞は血液系細胞である。ある実施形態において、細胞は白血球である。ある具体的な実施形態において、細胞は白血球の前駆細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、芽細胞)である。ある実施形態において、細胞は腫瘍性の細胞である。ある実施形態において、細胞は癌細胞である。ある実施形態において、細胞は血液系悪性腫瘍に由来するものである。別の実施形態において、細胞は固形腫瘍に由来するものである。例えば、細胞は、(例えば、生検切除または外科的切除による)患者の腫瘍に由来するものであってもよい。ある実施形態において、細胞は、被検体から得られた血液サンプル、または骨髄生検から得られる。ある実施形態において、細胞はリンパ節生検から得られる。細胞傷害性について、そのような試験をすることは、患者が特定の併用療法に応答するか否かを決定するのに有用であり得る。そのような試験は、悪性腫瘍を処置するのに必要な投薬量を決定するのにも有用であり得る。併用療法に対する患者の癌の感受性をこのように試験すると、患者に全く効果のない薬剤を不必要に患者に投与することを防止する。また、この試験によって、患者の癌が、組み合わせに対して特に感受性がある場合には、薬剤の一方または両方をより低い用量で使用することも可能になる。
【0057】
別の実施形態において、細胞は、癌細胞株に由来するものである。ある実施形態において、細胞は、本明細書において考察されているような血液系悪性腫瘍に由来するものである。ヒト白血病細胞株は、U937、HL−60、THP−1、Raji、CCRF−CEM、およびジャーカットなどである。CLL細胞株の例には、JVM−3およびMEC−2などがある。骨髄腫細胞株の例は、MM1.S、MM1.R(デキサメタゾン抵抗性)、RPMI8226、NCI−H929、およびU266などである。リンパ腫細胞株の例は、カルパス、SUDH−6、SUDH−16、L428、KMH2、およびグランタ(Granta)マントルリンパ腫細胞株などである。ある実施形態において、細胞は、AML細胞または多発性骨髄腫(CD138+)細胞である。ある実施形態において、細胞は、造血幹細胞または造血前駆細胞である。例えば、ある実施形態において、細胞は、CD34+骨髄細胞などの造血前駆細胞である。ある実施形態において、細胞株は、特定の化学療法剤に対して抵抗性を示すものである。ある具体的な実施形態において、細胞株は、ボルテゾミブに対して抵抗性を示す。別の実施形態において、細胞株はステロイド抵抗性(例えば、デキサメタゾン抵抗性、プレドニゾロン抵抗性)である。ある具体的な実施形態において、細胞は、ステロイド抵抗性ヒト多発性骨髄腫細胞である。
【0058】
本発明の併用療法で処理された細胞においては、さまざまなマーカーについてアッセイすることができる。例えば、マーカーであるアネキシンVを利用して、アポトーシスを起こしている細胞を同定することができる。NF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質は、本併用療法によって下方制御されることが示されている。アッセイすることができる抗アポトーシスタンパク質は、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPなどである。ある実施形態において、細胞内でNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIP)を下方制御するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせが、ストレスに関連するJNK経路を活性化することが明らかになっているため、p−JNKなど、JNK経路のタンパク質もアッセイすることができる。ある実施形態では、細胞内でJNK経路を活性化するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。ある実施形態では、細胞内でカスパーゼ−12の切断を誘導するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。
医薬組成物
また、本発明は、組み合わせることによって血液系悪性腫瘍など腫瘍性の細胞に対して細胞増殖抑制活性または細胞傷害性活性を示す、本明細書に記載されているロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターを含む医薬組成物、調製物、またはキットも提供する。これらの医薬組成物、調製物、またはキットは、一般的に、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターを投与するのに適した量を含む。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターを、同一組成物に混合しない。例えば、これら2つの薬剤は、同一の液体または粉末の一部としない。一般的には、これら2つの薬剤は、2つの異なる組成物に分けておき、別々に送達する。キットは、ロミデプシンの医薬組成物と、別にプロテアソームインヒビターの医薬組成物とを含むことが可能である。ある具体的な実施形態において、医薬組成物、調製物、またはキットは、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。ある実施形態において、これら2つの医薬の間で相乗作用が生じる場合、一方または両方の薬剤の量は、薬剤を単独で投与する場合に投与される量よりも低量である。ある実施形態において、両方の薬剤ともより低量である。ある実施形態において、投与される量は、被検体の血中でナノモルレベル(nanomolar level)となるのに十分な量である。ある実施形態において、投与される量は、被検体の癌またはその他の新生物の部位においてナノモル濃度となるのに十分な量である。ロミデプシンおよびボルテゾミブそれぞれの用量は、上記で詳細に記載されている。
【0059】
上記で考察したように、本発明は、細胞傷害性活性をもつ、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの新規の組み合わせを提供し、それゆえ、本発明の化合物は、癌およびその他の新生物を含む、さまざまな病状を処置するのに役立つ。ある実施形態において、本薬剤は相乗的に作用して癌細胞を死滅させる。別の実施形態において、本薬剤は相加的に作用して癌細胞を死滅させる。
【0060】
本発明の医薬組成物、調製物、またはキットは、他の治療剤を含むことができる。他の医薬は、被検体に投与するのに有用である、任意の別の治療剤であろう。他の治療剤は、好ましくは、投与されるロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターと有害な相互作用をしない。ある実施形態において、本発明は、一つ以上の他の治療剤、例えば、別の細胞傷害性剤、ステロイド剤、鎮痛剤などを組み合わせした、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与を提供する。ある実施形態において、他の治療剤は、別の化学療法剤である。ある実施形態において、他の治療剤はステロイド剤(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、プレドニソロン)である。他の治療剤には、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターの副作用を緩和もしくは軽減する薬剤が含まれ得る。ある実施形態において、他の治療剤は、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどの抗炎症剤、鎮痛剤、抗吐剤、または解熱剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、悪心、嘔吐、胃の不調、および下痢などの胃腸障害を処置するための薬剤である。これらの付加的薬剤には、制吐剤、下痢止め、液置換(fluid replacement)、電解質置換などが含まれる。ある具体的な実施形態において、他の治療剤は、カリウム、マグネシウム、およびカルシウム、特に、カリウム、およびマグネシウムなどの電解質置換または電解質補充である。ある実施形態において、他の治療剤は抗不整脈剤である。ある実施形態において、他の治療剤は血小板増強剤(platelet booster)、例えば、血小板の産生および/または放出を増加させる薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、エリスロポエチンなど、血球の産生を促進する薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、高血糖を抑制するための薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は免疫系刺激剤である。ある実施形態において、本発明は、ロミデプシン以外のHDACインヒビターの投与を含まない。
【0061】
また、当然のことながら、本発明に従って利用される薬剤のうちのあるものは、処置のために特別な制限を受けない形状で存在しうるか、または特定の場合、その薬学的に許容される形態として存在しうる。本発明によれば、薬学的に許容される形状には、薬学的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、保護型、立体異性体、異性体、還元型、酸化型、互変異性体、または必要とする患者に投与されると、本明細書において別様に記載されている薬剤を直接的または間接的に提供することができる、その他の任意の付加物もしくは誘導体、またはそれらの代謝物もしくは残留物(residue)、例えば、プロドラッグなどがあるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書において用いる場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよびその他の動物の組織に接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な利益/リスク比に適合する塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野においてよく知られている。例えば、S.M.Bergeらが、J. Pharmaceutical Sciences,66:1−19,1977において薬学的に許容される塩を詳細に記載しており;これは、参照されて本明細書に組み込まれる。これらの塩は、本発明の化合物を最終的に単離および精製する過程において原位置で調製するか、または遊離塩基型官能基を適当な有機酸または無機酸と反応させることによって別々に調製することができる。薬学的に許容される無毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸によって形成されるアミノ基の塩、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸によって形成されるアミノ基の塩、またはイオン交換法など、当技術分野において利用されているその他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。その他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などがあげられる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあげられる。さらなる薬学的に許容される塩には、特定の場合、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオンなどがあげられる。
【0063】
さらに、本明細書において用いる場合、「薬学的に許容されるエステル」という用語は、インビボで加水分解するエステルを意味し、ヒトの体内で直ちに分解して親化合物またはその塩を残すものが含まれる。適当なエステル基は、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸に由来する基であり、具体的には、アルキル部分またはアルケニル部分のそれぞれが、有利には、6個よりも多い炭素原子をもたないアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸(alkanedioic acid)などである。特定のエステルの例は、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、アクリル酸塩、およびエチルコハク酸塩を含む。ある実施形態において、これらのエステルは、エステラーゼなどの酵素によって切断される。
【0064】
さらに、本明細書において用いる場合、「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよびその他の動物の組織に接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な利益/リスク比に適合し、かつ使用目的にとって有効な、本発明に従って使用される化合物のプロドラッグを意味する。「プロドラッグ」という用語は、例えば、血液中での加水分解によって、インビボで急速に変換されて上記の化学式の親化合物を生じさせる化合物を意味する。T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987には徹底的な考察が記載されており、これらは、いずれも参照されて本明細書に組み込まれる。
【0065】
上記したとおり、本発明の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含むが、本明細書において用いる場合、それらは、所望の特定の投薬形状に適する溶媒、希釈剤、またはその他の液体溶媒、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固形結合剤、潤滑剤、浸透増進剤、可溶化剤などである。Remington‘s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton, Pa.,1975)には、医薬組成物の処方に利用されるさまざまな担体、およびそれらを調製するための既知の技術が開示されている。従来からの担体媒質が、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生じるか、さもなければ、医薬組成物のその他の成分(一つまたは複数)と有害な局面で相互作用するかして、本発明の抗癌化合物には適合しないというのでない限り、その使用は本発明の範囲内にあるものとみなされる。薬学的に許容される担体として使用することができる物質のいくつかの例には、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;クレモホル(ポリエトキシル化ヒマシ油(caster oil));ソルトール(Solutol)(12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル);ココアバターおよび座薬用ワックスなどの賦形剤;落花生油および綿実油などの油脂、紅花油;胡麻油;オリーブ油;コーン油;大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、また、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの無毒性の適合潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、風味料、および香料、保存剤、および抗酸化剤も、処方者の判断に従って組成物に入れることができる。
【0066】
これらおよびその他の本発明の局面は、以下の実施例を考慮すると、より深く理解することができる。ただし、以下の実施例は、本発明のある具体的な実施形態を記載するためのものであり、本特許請求の範囲によって規定されるように、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせ
方法。ヒト骨髄腫のU266細胞およびRPMI8226細胞を、3〜4nMの登録商標VELCADE(ボルテゾミブ)の非存在下または存在下で、2〜3nMのロミデプシン(FK288)に48時間曝露し、その後、アネキシンV+染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシス細胞の割合を測定した。初代CD138+骨髄腫細胞を、多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルから単離した。次に、CD138+細胞およびCD138−細胞を、3nMのロミデプシン±3nMのボルテゾミブで24時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。デキサメタゾン感受性ヒト骨髄腫細胞(MM.1S)およびデキサメタゾン抵抗性ヒト骨髄腫細胞(MM.1R)を、1nMのロミデプシン±2nMのボルテゾミブに24時間曝露し、その後、アネキシンV+染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシス細胞の割合を測定した。12nMの濃度に達すまでボルテゾミブの濃度を徐々に高めながらU266細胞を培養して、ボルテゾミブ抵抗性細胞(U266/PS−R)を作製した。次に、5〜15nMのボルテゾミブの非存在下または存在下で、U266/PS−R細胞を2nMのロミデプシンで48時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。ヒト多発性骨髄腫細胞(U266)を2nMロミデプシン±3nMのボルテゾミブに48時間曝露し、その後、イムノブロット解析を行って、JNK活性化、およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の発現をモニターした。
【0068】
結果。極めて低い(ナノモル)濃度で投与されたボルテゾミブとロミデプシンは、相乗的に相互作用して、ヒト多発性骨髄腫細胞株においてアポトーシスを誘導する(図1)。さらに、極めて低濃度で投与されたボルテゾミブとロミデプシンの組み合わせは、初代ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを誘導するが、正常な骨髄細胞は傷つけないため、治療選択性の根拠となる可能性を示唆している(図2)。これら2つの薬剤を極めて低い(ナノモル)濃度で投与すると、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫細胞において、ロミデプシンがボルテゾミブの致死性を増強すると考えられている(図3)。また、ロミデプシンは、ボルテゾミブ単独には抵抗性を示す多発性骨髄腫細胞においてボルテゾミブの致死性を増強する(図4)。ヒト多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの間の相乗的相互作用は、ストレス関連JNK経路の活性化と、いくつかのNK−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、およびXIAP)の下方制御とを伴う(図5)。
【0069】
結論。ロミデプシンおよびボルテゾミブは、極めて低濃度(例えば、低nM)で同時に投与されると相乗的に相互作用して、培養された多発性骨髄腫細胞および初代多発性骨髄腫細胞(ステロイドまたはボルテゾミブに抵抗性を示すものを含む)においてアポトーシスを誘導する。これらの作用は、ストレス関連JNK経路の活性化およびNK−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の下方制御を伴う。これらの知見は、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む組み合わせのレジメンが、多発性骨髄腫患者を処置する際の有効な方策となりうることを示している。
(実施例2)慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせ
方法。初代CLL細胞を5人のCLL患者から単離し、最低毒性濃度のボルテゾミブ(3nM)±ロミデプシン(3〜5nM)に24時間曝露し、その後、7AAD染色法/フローサイトメトリー、および光学顕微鏡下におけるライト−ギムザ染色されたサイトスピンスライドによって、細胞死を測定した。イムノブロット解析(条件当たり30μgのタンパク質)を行って、カスパーゼ−12およびPARPの切断、IκBαのレベル、ホスホ−IκBαのレベル、p65のレベル、p100/p52のレベル、ならびにNF−κBの下流にある抗アポトーシスタンパク質の発現を検出した。2つの樹立CLL細胞株(JVM−3およびMEC−2、DSMZ)において並行研究を行った。細胞を、毒性濃度よりも低い濃度のボルテゾミブ(JVM−3、3nM;MEC−2、5nM)およびロミデプシン(JVM−3、3nM;MEC−2、5nM)によって48時間同時処理し、その後、それぞれアネキシンV/PI染色またはアネキシンV/DiOC6染色した後、フローサイトメトリーによって、アポトーシス細胞と、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)が失われた細胞の割合を測定した。固定濃度比(1:1)でボルテゾミブおよびロミデプシンを投与した後、市販のソフトウェアプログラム(Calcusyn;Biosoft)を用いて、用量中央値効果(Median Dose Effect)解析法によって、これらの薬剤の相乗性を評価した。Amaxa Nucleofectorデバイス(U−15プログラム)を使用して、一過性トランスフェクションを行い、ヒトB細胞Nucleofectorキットを使用して、NF−κB活性、および不活性型RelA/p65変異体(アセチル化部位変異体)の機能的作用を評価した。
【0070】
結果。低濃度(3nM)で投与されたボルテゾミブとロミデプシンによる組み合わせ処理は、初代CLL細胞においてアポトーシスおよびカスパーゼ−12切断を強力に誘導する(図6)。ロミデプシンは、5種類の初代CLLサンプル中の4例において、ボルテゾミブの致死性を劇的に増加させ、1つのサンプルにおいて相加的致死性をもたらした(図7)。毒性濃度よりも低い濃度(例えば、2〜5nM)でロミデプシンとボルテゾミブを同時に投与したところ、CLL細胞株(JVM−3およびMEC−2)においてアポトーシスが劇的に誘導された。高度の相乗的相互作用が、用量中央値効果解析によって記録された(図8)。ロミデプシンは単独で、初代CLL細胞においてNF−κB活性を活性化したが、これは、ボルテゾミブとの同時投与によって阻害された一作用であった。ボルテゾミブはまた、NF−κB2前駆体であるp100をその活性型であるp52にする、ロミデプシンが介在するプロセッシングを遮断した。ボルテゾミブとロミデプシンの同時投与によって、A1、Bcl−xL、XAIP、cIAP1、cIAP2、c−FLIP、およびICAM−1など、複数のNF−κBの下流にある生存タンパク質の発現が下方制御された。ボルテゾミブ処理単独では、Mcl−1蓄積を誘導したが、これは、ロミデプシンに同時曝露された細胞内では減少した。この組み合わせは、抗アポトーシスタンパク質であるサバイビンの切断ももたらした(図9)。
【0071】
結論。ぎりぎりの毒性濃度のロミデプシンとボルテゾミブを同時に投与すると、初代ヒトCLL細胞およびCLL細胞株において、高度に相乗的なアポトーシス誘導が起きる。これらの事象は、NF−κB経路の破壊、およびBcl−2ファミリーの複数の抗アポトーシスメンバーの下方制御を伴う。まとめると、これらの知見は、ロミデプシンとボルテゾミブを含む組み合わせレジメンが難治性CLL患者を処置する際の有効な戦略であり得るという可能性を提起するものである。
(実施例3)ロミデプシンとボルテゾミブを組み合わせて用いた多発性骨髄腫の処置
ロミデプシンとボルテゾミブを組み合わせて用いて、ヒト臨床試験において多発性骨髄腫(MM)患者を処置した。この臨床試験は、再発性または難治性の多発性骨髄腫を患う患者におけるボルテゾミブ、デキサメタゾン、およびロミデプシン(デプシペプチド、FK228)の非盲検、単一施設、単一群の第I/II相の用量漸増試験(dose escalation trial)であり、その後、病勢悪化までロミデプシン治療を維持した。図10に試験デザインを示す。
【0072】
この臨床試験の目的は、再発性多発性骨髄腫患者における、ボルテゾミブとともに投与されるロミデプシンの最大耐用量(MTD)、および総合的な反応、進行までの期間、および全生存率について、この組み合わせのMTDにおける効果を判定することを含む。
【0073】
具体的には、第I相(加速用量増加相(accelerated dose escalation phase))の間は、加速増量法(accelerated titration design)を用いて、ロミデプシンのMTDを確認した。例えば、用量規定毒性(DLT)がなく、かつ2例よりも少ない患者が、第1サイクル(C1)において中程度の毒性である場合には、次の患者を1レベル上げて開始する。National Cancer Institute Common Toxicity Criteria(NCI−CTC)(3版)によれば、DLTは、次のように定義される。血小板数25×109/L未満、G−CSFサポートにもかかわらずグレード4の好中球減少、処置にもかかわらずグレード3または4の悪心、嘔吐、または下痢、他の任意のグレード3か4の非血液系毒性、または毒性に起因する4週間よりも長期の処置中断。加速相(accelerated phase)は、1人の患者がC1においてDLTを示すか、2人の患者が最初の処置サイクルの過程で「中程度」の毒性を経験したときに終了する。標準的な用量漸増デザインに従って、患者を3つのコホートに参加させた。最大6人の患者を任意の投薬量で処置した。MTDは、DLTの発生率が33%未満である最大投薬量と定義される。下記の表1に、一般的な用量漸増計画を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
MTDを決定した後、ボルテゾミブ−ロミデプシンの組み合わせの効果に関するさらなるデータを得るために、このMTDでの第II相において、さらに15人の患者を加える。
【0076】
加入可能な患者は、18歳以上で、再発性多発性骨髄腫にかかっており、最大4回までの治療歴のある者でなければならない。また、適格な患者は、計測可能な疾病を持ち、および、血小板数が50×109/l以上であり、血液ヘモグロビン(Hb)濃度が少なくとも75g/Lであり、好中球絶対数が少なくとも0.75×100/Lであり、かつ充分な肝臓および腎臓の機能をもつ必要がある。
【0077】
治験(trail)に適さない患者は、the National Cancer Institute Common Toxicity Criteria of Adverse Events(NCI−CTCAE)(3.0版)によって示された判定基準によれば、グレード3、またはそれよりも悪化している神経障害、またはグレード1、またはそれよりも強い疼痛を伴うグレード2の神経障害を有する者;心不整脈または活動性冠状動脈疾患の既往のある者;QTc間隔延長を起こす薬および/またはCYP3A4阻害剤など組み合わせ薬剤を使用する者などである。
【0078】
加入患者の特徴を下記の表2にまとめる。
【0079】
【表2】
【0080】
患者は全員、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目に1.3mg/m2用量のボルテゾミブ、1日目、2日目、4日目、5日目、8日目、9日目、11日目、および12日目に20mg用量のデキサメタゾンの投与を受けた。ロミデプシンの用量増加は、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に8mg/m2用量を静脈内に投与することから始まり、ロミデプシンの患者内用量漸増を伴う、加速用量増加相を含んでいた。
【0081】
この28日の誘導サイクルは、例えば、最大8サイクルまで反復することができる。2007年8月現在、患者に送達されるサイクル数の中央値は3回である。各個人が受けたサイクルの数は図11に要約されている。最終処置用量レベルの分布を図12に示す。
【0082】
現在までに、8mg/m2(n=1)または10mg/m2(n=3)というロミデプシン用量では、用量規定毒性が示されていなかった。12mg/m2のロミデプシン用量では、グレード4の血小板減少症のエピソードが3例、および発熱性好中球減少症のエピソードが1例発生している。注目すべきは、グレード4の血小板減少症患者のうちの2人が、本組み合わせを開始する前には、血小板数が100×109個/L以下であった(加入させるに当たっては、患者の血小板数は50×109/Lより大でなければならなかった)。
【0083】
観察されたその他の薬物関連毒性には以下のものがある:グレード3の疲労感(n=1);好中球減少(n=1);敗血症(n=1);グレード2の疲労感(n=1);末梢神経障害(n=2);悪心(n=1);および下痢(n=1)。末梢神経障害のために、2人の患者でボルテゾミブの減量が必要になった(これらの患者は、12mg/m2のロミデプシンを同時投与されていた)。表3に、薬物関連有害事象がまとめられている。
【0084】
【表3】
【0085】
ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせは、充分な忍容性が認められた。最大許容投与量は、処置用量レベル2、すなわち、1.3mg/m2用量のボルテゾミブ、20mg用量のデキサメタゾン、および10mg/m2用量のロミデプシンに相当している。表3に示されているように、血小板減少症がグレード3以上の毒性で最もよく見られる。血小板減少症の動態の例が図13に示されている。
【0086】
第3サイクル、第5サイクル、および第7サイクルの1日目、および各維持サイクルの1日目に反応を評価した。M−タンパク質応答基準に従って反応率(response rate)を評価し、完全な反応をBlood and Marrow Transplantation(EMBT)基準に従って記録した。
【0087】
表4は、本試験の応答結果をまとめたものである。患者には、免疫固定法陰性で完全寛解(CR)した者が1人、部分寛解(PR)した者が6人、またやや寛解(MR)した者が1人いた(図14も参照)。ほとんどの患者に併用療法を続けた。この臨床試験は、ロミデプシン(10mg/m2)とボルテゾミブ(1.3mg/m2)の用量で患者を追加しながら継続される。
【0088】
【表4】
【0089】
この臨床試験の結果は、ボルテゾミブとロミデプシンの組み合わせが、再発性/難治性の多発性骨髄腫において有望な応答率および持続的応答を示すことを示唆ている。
【0090】
(均等および範囲)
上記したものは、本発明のある非限定的で好適な実施形態の記載であった。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書で記載した本発明の具体的な実施形態に等価な多くのものを認識するかあるいは、確認することができる。当業者は、以下の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、この記載にさまざまな変更または改変を加えることができることを理解する。
【0091】
請求項において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対の指示があるか、または文脈から明確にそうでないことが分からない限り、一つまたは一つ以上を意味し得る。一つの群の一つ以上のメンバーの間に「or」が含まれている請求項または記載は、反対の指示があるか、または文脈から明確にそうでないことが分からない限り、その群のメンバーの一つ、一つ以上、または全部が、所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、またはそれに関連していても要件を満たすものみなされる。本発明は、群の一つだけのメンバーが、所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、または関連している実施形態を含む。また、本発明は、群のメンバーの一つ以上、またはすべてが所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、または関連している実施形態も含む。さらに、当然ながら、本発明は、一つ以上の限定、要素、条項、記載用語などを、一つ以上の請求項から、または本明細書の関連箇所から、別の請求項に導入する、すべての改変、組み合わせ、および置換を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する別の任意の請求項に記載されている一つ以上の限定事項を含むように改変することができる。さらに、これらの請求項に組成物が記載されている場合には、別段の指示があるか、矛盾や不整合が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている目的のいずれかのためにその組成物を使用する方法も含まれ、また、本明細書に開示されている作製法のいずれか、または当技術分野において既知の方法に従って組成物を作製する方法も含まれるものと理解される。さらに、本発明は、本明細書に開示されている組成物の調製法のいずれかに従って作製された組成物を包含する。
【0092】
構成要素が列挙されて示されている場合、例えば、マーカッシュ群形式で提示されている場合には、構成要素の各下位群も開示されており、その群から任意の構成要素(一つまたは複数)を削除することができると理解される。また、「含む」という用語は、限定するのではなく、さらなる要素または工程を含むことができる。一般的に、本発明または本発明の局面が、特定の要素、特徴、工程などを含むと言う場合、本発明のある実施形態または本発明の局面は、そのような要素、特徴、工程などからなるか、または実質的にそれらからなると理解されるべきである。便宜上、それらの実施形態は、本明細書において正確に引用されて、具体的に記載されているのではない。したがって、一つ以上の要素、特徴、工程などを含む、本発明の各実施形態について、本発明は、それらの要素、特徴、工程などからなるか、または実質的にそれらからなる実施形態も提供する。
【0093】
範囲が記載されている場合には、端点が含まれる。さらに、別段の記載がない限り、または文脈および/または当業者の理解するところから明確に別様でない限り、範囲で表現されている数値は、文脈上明らかに別段の記載がなされていない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで、記載された範囲内にある任意の具体的数値を、本発明の異なった実施形態において想定することができると理解される。また、別段の記載がない限り、または文脈および/または当業者の理解するところから明確に別様でない限り、範囲で表現されている数値は、その所定の範囲内の任意の部分的範囲を想定することができ、その部分範囲の端点も、その範囲の下限の単位の10分の1と同じ精度で表現されていると理解される。
【0094】
また、本発明の任意の具体的な実施形態を、任意の一つ以上の請求項から明示的に除外することができるものと理解される。任意の実施形態、要素、特徴、用途、または本発明の組成物および/または方法の局面を、一つ以上の請求項から除外することができる。例えば、本発明のある実施形態において、生理活性物質(biologically active agent)は抗増殖剤ではない。簡略を期すために、一つ以上の要素、特徴、目的、または局面が除外されている実施形態のすべてを本明細書において明示的に示すことはしない。
【技術分野】
【0001】
関連する出願
本出願は、米国特許法第119条第e項の下、2007年1月23日に出願された米国仮出願第60/886,169号、および2007年12月7日に出願された同第61/005,774号に優先権の主張をしており、それらの各々を参照として本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
ロミデプシンは、藤沢薬品によってクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)から単離された天然物である。特許文献1;1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号参照。これらは、参照されて本明細書に組み込まれる。ロミデプシンは、4個のアミノ酸残基(D−バリン、D−システイン、デヒドロブチリン、およびL−バリン)および新規の酸(3−ヒドロキシ−7−メルカプト−4−ヘプテン酸)からなる二環式ペプチドである。ロミデプシンは、アミド結合およびエステル結合を含むデプシペプチドである。ロミデプシンは、C.ビオラセウムからの発酵処理によるだけでなく、合成手段または半合成手段によっても調製することができる。Kahnらによって報告されたロミデプシンの全合成は14の工程を含み、18%の全収率でロミデプシンが得られる。非特許文献1。ロミデプシンの構造を以下に示す:
【0003】
【化1】
【0004】
。
ロミデプシンには、抗菌活性、免疫抑制活性、および抗腫瘍活性があることが分かっている。これは、抗癌治療を開発する上で有望になった新たな標的である脱アセチル化酵素(例えば、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)、チューブリン脱アセチル化酵素(TDAC))を選択的に阻害することによって作用すると考えられている。非特許文献2。一つの作用機序は、一種類以上のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を阻害することを含むと考えられる。
【0005】
ヒストン脱アセチル化酵素は、その活性部位に亜鉛を有するメタロ脱アセチル化酵素である。非特許文献3。この酵素は、ヒストンのアセチル化を促すことによって遺伝子発現を調節し、それによって、クロマチンの弛緩を誘導し、また、普遍的ではないが、一般的に、転写の活性化を誘導すると考えられている。これらの酵素はHDACとして知られているが、その他の多様な細胞過程にも関与するとされてきた。例えば、HDACインヒビターは、デスレセプター(death receptor)の上方制御、Bid切断、ROS産生、Hsp90の調節異常、およびとりわけセラミド産生など、多様なメカニズムを介して腫瘍性の細胞におけるアポトーシスを開始させることが分かっている。いくつかのHDACインヒビターは、臨床の活舞台(clinical arena)に入っており、血液系悪性腫瘍(hematologic malignancy)および非血液系悪性腫瘍の両方において活性を示している。ロミデプシンは、ある血液系悪性腫瘍、特にT細胞リンパ腫において目覚しい活性を示している(非特許文献4;これは参照されて本明細書に組み込まれる)。
【0006】
ロミデプシン以外にも、さまざまな誘導体も調製されて研究されている。次の特許および特許出願には、ロミデプシンの多様な誘導体が記載されている:米国特許第6,548,479号;特許文献2;特許文献3;および特許文献4;これらはそれぞれ参照されて本明細書に組み込まれる。
【0007】
プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブ(登録商標VELCADE)は、26Sプロテアソームの触媒ユニットの強力な阻害剤である。これは、さまざまな腫瘍性の細胞株においてアポトーシスを誘導する一方で、正常な細胞に対しては比較的低い毒性を及ぼすのみである。ボルテゾミブの致死性のメカニズムは明確には知られていないが、とりわけ、NF−κBインヒビターであるIκBαのプロテアソーム分解からの回避に伴う二次的なNF−κBの阻害に因るものとされている。ボルテゾミブは、多発性骨髄腫において高い活性を示し、標準的な治療では治療が難しい骨髄腫患者における使用が認められている。最近の研究で、これがマントル細胞リンパ腫など、非ホジキンリンパ腫のいくつかの型に対しても活性を示すと考えられることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許出願公開平7−64872号(1995年)
【特許文献2】国際公開第05/0209134号パンフレット
【特許文献3】国際公開第05/058298号パンフレット
【特許文献4】国際公開第06/129105号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc. 118:7237−7238,1996
【非特許文献2】Nakajimaら、Experimental Cell Res.241:126−133,1998
【非特許文献3】Finninら、Nature,401:188−193,1999
【非特許文献4】Piekarzら、“A review of depsipeptide and other histone deacetylase inhibitors in clinical trials”Curr.Pharm.Des.10:2289−98,2004
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビター(例えば、ボルテゾミブ)を組み合わせる、癌およびその他の新生物などの増殖性疾患の処置を提供する。本発明は、これらの医薬の両方を一緒に投与すると、これら2つの医薬の間に予想外の相乗効果が見られることが分かったために生まれたものである。すなわち、これら2つの薬を、各薬剤を個別に使用するときに通常用いるよりも少ない用量で投与しても、被検体の癌またはその他の新生物を処置するのに依然として有効でありえる。この相乗効果は、血液系細胞の悪性腫瘍を処置する場合に特に顕著である。例えば、多発性骨髄腫および慢性リンパ球性白血病(CLL)の処置において特に効果的な組み合わせが本明細書に示されている。ある実施形態において、このような低用量の組み合わせは、正常な細胞よりも腫瘍性の細胞に対して細胞傷害性が高い。本発明の併用療法は、難治性および/または再発性の癌(例えば、ボルテゾミブ抵抗性の癌、ステロイド抵抗性の癌)の処置において特に有用であることが分かっている。本発明は、本発明の薬剤の組み合わせて使用する方法を提供するだけでなく、本発明の組み合わせを含む医薬組成物およびキットも含む。
【0011】
一つの局面において、本発明は、被検体に治療上有効な量のロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを投与することによって、その被検体(例えば、ヒト)の癌を処置する方法を提供する。ある実施形態において、この組み合わせはロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。これらの薬剤はいずれも、癌を患うヒト被検体を処置するために、臨床上利用されてきたものである。ある実施形態において、ロミデプシンおよびボルテゾミブを、それぞれ個別に使用する場合よりも低い投与量で組み合わせて使用することできる。別の実施形態において、この組み合わせの相加的な性質が、癌またはその他の新生物を処置するのに特に有用である。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2から15mg/m2の用量で、ボルテゾミブは、0.1mg/m2から5mg/m2の用量で投与される。これら2つの薬は一緒に投与しても、一つずつ投与してもよい。本方法は、血液系悪性腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、CLL)を処置するのに特に有用である。ある実施形態において、癌はボルテゾミブに対して抵抗性を示す。ある実施形態において、癌はステロイド処置に対して抵抗性を示す。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは、別の抗新生物剤またはステロイド剤とともに投与される。一つの具体的な実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは、ステロイド剤(例えば、プレドニソロン、デキサメタゾン)とともに投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、0.25mg〜100mg、または5mg〜60mg、もしくは10mg〜50mgの範囲の用量で投与される。具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約40mgの用量で投与される。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約20mgの用量で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは静脈内投与される。ある実施形態において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターのそれぞれを2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与し、プロテアソームインヒビターを週2回投与する。ある実施形態において、ステロイド剤は、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターと一緒に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する5〜7日前に投与してもよい。
【0012】
別の局面において、本発明は、多発性骨髄腫を患う被検体に、治療上有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与して、被検体(例えば、ヒト)の多発性骨髄腫を処置する方法を提供する。ある実施形態において、ロミデプシンの治療上有効な量の範囲は、4mg/m2から15mg/m2または8mg/m2から10mg/m2である。ある実施形態において、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量の範囲は、0.5mg/m2から3mg/m2である。ある実施形態において、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量は約1.3mg/m2である。ある実施形態において、ロミデプシンの治療上有効な量の範囲は8mg/m2から10mg/m2であり、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量は約1.3mg/m2である。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与し、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を週2回投与する。いくつかの実施形態において、ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)は、ステロイド剤(例えば、プレドニソロン、デキサメタゾン)とともに投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、0.25mg〜100mg、または5mg〜60mg、または10mg〜50mgの範囲の用量で投与される。具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約40mgの用量で投与される。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤は、約20mgの用量で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤は、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)と一緒に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する5〜7日前に投与してもよい。
【0013】
別の局面において、本発明は、細胞を、ロミデプシンと、ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターとの組み合わせに接触させることによって、細胞をインビトロで処置する方法を提供する。細胞は、処置する細胞を死滅させるのに十分な濃度の該組み合わせによって処置することができる。ある実施形態において、アポトーシスの細胞内マーカーのレベルが変化することで明らかに示されるようにアポトーシスを誘導するのに十分な濃度の組み合わせが使用される。ある実施形態において、細胞は腫瘍性の細胞である。この細胞は、ヒト癌由来のものであっても、癌細胞株(例えば、多発性骨髄腫、CLL)由来のものであってもよい。ある実施形態において、細胞は血液系細胞、具体的には白血球細胞(例えば、T細胞、B細胞、形質細胞など)である。ある実施形態において、細胞は、B細胞またはT細胞などのリンパ球である。ある実施形態において、細胞は形質細胞である。細胞は、如何なる分化または発達の段階にあってもよい。ある実施形態において、細胞は、ボルテゾミブに対して抵抗性を示す。ある実施形態において、細胞は、ステロイド剤(例えば、デキサメタゾン、プレドニソロンなど)に対して抵抗性を示す。本方法は、ある条件下(例えば、各薬剤の濃度、他の医薬との組み合わせ)で、ある組み合わせの細胞傷害性を評価するのに特に有用である。本発明の方法を利用して、併用療法に対する被検体の癌または新生物の感受性を確認することができる。また、本発明の組み合わせを利用して、細胞内におけるJNK経路を活性化させたり、細胞内におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質またはその他の抗アポトーシスタンパク質を下方制御したり、および/または細胞内におけるカスパーゼ−12の切断を誘導したりすることもできる。本発明の組み合わせによる、このような細胞経路の調節は、臨床目的のためであっても、研究目的のためであってもよい。
【0014】
さらに別の局面において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを含む医薬組成物または調製物が提供される。ある具体的な実施形態において、この組成物または調製物は、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。この医薬組成物は、癌(例えば、多発性骨髄腫、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫、CLL)を処置するために治療上有効な量の各薬剤を含む。これらの医薬を組み合わせて投与すると相乗作用があるため、これらの薬剤を個別に送達する場合よりも各々の薬剤の量を少なくすることができる。この医薬組成物は、他の細胞傷害性薬剤または抗腫瘍性剤を含むことが可能である。この医薬組成物は、疼痛、悪心、脱毛、体重減少、体重増加、神経障害、不整脈、電解質欠乏症または平衡失調、貧血、血小板減少症、免疫抑制、皮膚症状、または癌もしくは癌処置に付随するその他の症状を緩和させるために、その他の薬剤も含むことができる。また、本発明は、便利な投薬形態にした本発明の医薬組成物を含むキットも提供する。薬剤は、キットの中で一緒に包装されていても、個別包装されていてもよい。このキットは、複数回投与用量分の各薬剤を含んでいてもよい。ある実施形態において、本キットは、被検体の癌の処置における化学療法の全コースを行うのに十分な量の各薬剤を含む。また、本キットは、本発明の組み合わせを投与するための賦形剤または装置を含むこともできる。本キットは、本発明の組み合わせを投与する上での説明書を含むこともできる。
(定義)
本明細書全体を通じて使用されているその他の用語の定義には以下のものがある:
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に別段の記載がない限り、複数形への言及も含む。従って、例えば、「一つの細胞(a cell)」という場合には、そのような細胞が複数の場合も含む。
【0015】
「動物」:本明細書において用いる場合、「動物」という用語は、動物界の任意のものを意味する。いくつかの実施形態において、「動物」は、ヒトを意味し、如何なる発育段階にあってもよい。いくつかの実施形態において、「動物」は、ヒト以外の動物を意味し、如何なる発育段階にあってもよい。いくつかの実施形態において、動物とは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、および/またはワーム(worm)などであるが、それらに限定されない。ある実施形態において、ヒト以外の動物は哺乳動物(例えば、齧歯動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、および/またはブタ)である。いくつかの実施形態において、動物はトランスジェニック動物、遺伝子改変動物、および/またはクローンであってもよい。
【0016】
「デプシペプチド」:「デプシペプチド」という用語は、本明細書において用いる場合、エステル結合とアミド結合の両方を含むポリペプチドを意味する。天然型デプシペプチドは、通常は環状である。いくつかのデプシペプチドは、強力な抗生物質活性をもつことが分かっている。デプシペプチドの例は、アクチノマイシン、エンニアチン、バリノマイシン、およびロミデプシンなどである。
【0017】
「有効量」:一般的には、ある活性薬剤、または薬剤を組み合わせしたものの「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発させるのに十分な量を意味する。当業者には理解されるように、本発明の組み合わせの有効量は、所望の生物的エンドポイント、送達されている薬剤の薬物動態、処置される疾患、投与方法、および患者などの因子に応じて変えることができる。例えば、本発明の組み合わせ(例えば、ロミデプシンおよびボルテゾミブ)の有効量とは、腫瘍負荷を軽減させたり、寛解を生じさせたり、患者を治癒させたりという結果をもたらす量のことである。
【0018】
「ペプチド」または「タンパク質」:本発明では、「ペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結した少なくとも3個のアミノ酸のつながりを含む。「タンパク質」または「ペプチド」という用語は、同義的に使用することができる。ペプチドは、好ましくは、天然型アミノ酸のみを含むが、当技術分野において知られている非天然型アミノ酸(すなわち、天然には存在しないが、ポリペプチド鎖に取り込むことができる化合物)および/またはアミノ酸類似体を代替的に用いることも可能である。また、ペプチド中のアミノ酸の一つ以上を、例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、共役、機能付加、またはその他の改変を行うためのリンカーなどの化学物質を付加することによって改変することもできる。ある実施形態において、ペプチドの改変は、より安定したペプチド(例えば、インビボにおける半減期の延長)をもたらすことができる。これらの改変には、ペプチドの環化、D−アミノ酸の取り込みなどが含まれる。これらの改変はいずれも、そのペプチドの所望の生物学的活性を実質的に阻害するものであるべきではない。ある実施形態において、ペプチドはデプシペプチドを意味する。
【0019】
「ロミデプシン」:「ロミデプシン」という用語は、以下の化学構造をもつ天然物を意味する:
【0020】
【化2】
【0021】
。
ロミデプシンは脱アセチル化酵素インヒビターであり、FK228、FR901228、NSC630176、またはデプシペプチドという名前でも当技術分野において知られている。ロミデプシンの同定および調製については、1990年12月11日に発行された米国特許第4,977,138号に記載されており、これは参照されて本明細書に組み込まれる。この分子式はC24H36N4O6S2であり、分子量は540.71g/molである。ロミデプシンの化学名は(1S、4S、10S、16E,21R)−7−[(2Z)−エチリデン]−4,21−ジイソプロピル−2−オキサ−12,13−ジチア−5,8,20,23−テトラアザビシクロ[8.7.6]トリコス−16−エン−3,6,9,19,22−ペンタノンである。ロミデプシンは、128517−07−7というCAS番号を割り当てられている。ロミデプシンは、結晶状態では、一般的には白色から淡黄白色の結晶または結晶性粉末である。「ロミデプシン」という用語には、この化合物およびその任意の医薬物形態が含まれる。ある実施形態において、「ロミデプシン」という用語は、その塩、プロドラッグ、エステル、保護型、還元型、酸化型、異性体、立体異性体(例えば、鏡像変異体、ジアステレオマー)、互変異性体、および誘導体も含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】登録商標VELCADE(ボルテゾミブ)は、ヒト多発性骨髄腫細胞において、デプシペプチドによって誘導されるアポトーシスを顕著に増強する。ヒト骨髄腫のU266細胞およびRPMI8226細胞を、3〜4nMのボルテゾミブの非存在下または存在下で、2〜3nMのロミデプシンFK288に48時間曝露し、その後、フローサイトメトリーによって、アネキシンV+(アポトーシス)細胞の割合を測定した。その結果、ボルテゾミブおよびロミデプシンは、低い(ナノモル)濃度で投与されると相乗的に相互作用して、ヒト多発性骨髄腫細胞株においてアポトーシスを誘導する。
【図2】ロミデプシン(FK288)およびボルテゾミブは、CD138+初代ヒト骨髄多発性骨髄腫細胞において相乗的に相互作用するが、その対応する正常CD138−細胞においてはそのように作用しない。初代CD138+骨髄腫細胞を、多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルから単離した。そして、CD138+細胞およびCD138−細胞を、3nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、3nMのロミデプシンによって24時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを測定した。ボルテゾミブおよびロミデプシンは、低い(ナノモル)濃度で投与されると、高度に相乗的に相互作用して初代ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを誘導するが、正常な骨髄細胞には何もしないため、このことが治療選択性の根拠となる可能性を示唆している。
【図3】ロミデプシン(FK288)/ボルテゾミブ(Btzmb)は、ステロイド抵抗性ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを相乗的に誘導する。デキサメタゾン感受性ヒト骨髄腫細胞(MM.1S)およびデキサメタゾン抵抗性ヒト骨髄腫細胞(MM.1R)を、2nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、1nMのロミデプシンに24時間曝露し、その後、フローサイトメトリーによって、アネキシンV+(アポトーシス)細胞の割合を測定した。その結果、これら2つの薬を低い(ナノモル)濃度で投与すると、ロミデプシンが、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫細胞におけるボルテゾミブの致死性を増強させることが明らかになった。
【図4】ロミデプシン(FK288)は、ボルテゾミブ抵抗性のU266多発性骨髄腫細胞におけるボルテゾミブの致死性を高める。ボルテゾミブ抵抗性細胞(U266/PS−R)を、ボルテゾミブの濃度を徐々に上げ、12nMの濃度に達するまで上昇させながらU266細胞を培養することによって作製した。U266/PS−R細胞を、5〜15nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、2nMのロミデプシンにより48時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。ロミデプシンが、ボルテゾミブのみに抵抗性を示す多発性骨髄腫細胞においてボルテゾミブの致死性を増強させることが明らかになった。
【図5】ロミデプシン(FK288)とボルテゾミブの組み合わせは、ヒト骨髄腫細胞においてストレス関連キナーゼJNKの活性化およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の下方制御を誘導する。ヒト多発性骨髄腫(U266)細胞を、3nMのボルテゾミブとともに、またはボルテゾミブなしで、2nMのロミデプシンに48時間曝露し、その後、イムノブロット解析を実施してJNK活性化(A)およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の発現(B)をモニターした。ヒト多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの間の相乗的相互作用は、ストレス関連JNK経路の活性化、およびいくつかのNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、およびXIAP)の下方制御を伴っている。
【図6】低濃度(3nM)で投与されるボルテゾミブ(Btzmb)およびロミデプシン(FK288)による組み合わせ処置は、初代CLL細胞においてアポトーシスおよびカスパーゼ−12切断を強力に誘導する。ロミデプシンおよびボルテゾミブは、ERストレスに関係する可能性のある過程を介して、患者由来の初代CLL細胞において相乗的に相互作用する。
【図7】ロミデプシン(FK288)とともに、またはそれがないところで、ボルテゾミブ(Btzmb)に曝露されたCLL細胞の顕微鏡写真(100×)。各処置(それぞれ3nM;24時間)は比較的非毒性であるが、組み合わせ処置はアポトーシス細胞を顕著に増加させている。
【図8】JVM−3CLL細胞株およびMEC−2(プロリンパ芽球性)CLL細胞株におけるロミデプシン(FK228)/ボルテゾミブの相互作用(48時間)。いずれの場合にも、細胞死の相乗的誘導が見られる。
【図9】初代CLL細胞を、ロミデプシン(FK288)とともに、またはそれがないところで、ボルテゾミブ(Btzmb)(それぞれ3nM)に24時間曝露し、その後ウエスタンブロット解析法を用いて、さまざまなアポトーシス調節タンパク質の発現をモニターした。ボルテゾミブおよびロミデプシンによる初代CLL細胞の組み合わせ処置は、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPなどの抗アポトーシスタンパク質の発現を顕著に減少させる。
【図10】臨床試験デザイン。臨床試験は、再発性または難治性の多発性骨髄腫を患う患者におけるボルテゾミブ、デキサメタゾン、およびロミデプシンの非盲検、単一施設、単一群、第I/II相の用量漸増試験の後、病勢悪化までロミデプシン維持治療を行うものであった。
【図11】各患者の処置曝露の結果をまとめたグラフの一例を示す。
【図12】最終処置用量レベルの分布を示す。用量レベル2が、ほとんどの患者にとって最終処置用量レベルである。
【図13】患者における血小板減少症の動態の一例を示す。
【図14】患者間における最良の応答結果をまとめたグラフである。免疫固定法陰性で完全寛解(CR)した者が1人、部分寛解(PR)した者が6人、またやや寛解(MR)した者が1人いた。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターを組み合わせて投与することで増殖性疾患を処置するための新規のシステムを提供する。これらの薬剤の組み合わせは相加的効果または相乗的効果をもたらすことができる。ある実施形態において、癌またはその他の新生物の処置において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの間に相乗的相互作用があることが、本明細書に記載されているように実証されている。図1〜9参照。この相乗効果は、悪性の血液系細胞、具体的には白血球細胞(例えば、白血病細胞、リンパ腫細胞、および骨髄腫細胞)の場合に特に顕著である。如何なる特定の理論にも拘泥するものではないが、この効果は、薬剤の組み合わせによって、ミトコンドリア損傷および/または活性酸素種(ROS)生成の誘導と連携してアポトーシスの相乗的誘導に起因し得る。
【0024】
一つの仮説は、ロミデプシンによるHDAC6インヒビターが介在するアセチル化によって生じるHsp90機能およびダイニン機能の干渉によって、タンパク質のミスフォールディングおよびアグリソームの機能障害がもたらされ、その結果、プロテアソームの阻害と連動してアポトーシスの増強が生じるというものである。二番目の仮説は、NK−κB機能の干渉が、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの組み合わせによる相乗作用に寄与している可能性があるというものである。HDACインヒビターが介在するp65/RelAのアセチル化によって、NF−κBの活性化がもたらされ、HDACインヒビターによって誘導されるROSの生成および致死性を促進する。ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターは、同様の作用をすると考えられている。
【0025】
ロミデプシンも、ボルテゾミブなどのプロテアソームインヒビターも、腫瘍性の細胞を選択的に標的とし、酸化的傷害を誘導して腫瘍性の細胞を死滅させ、また、相乗的に作用して、悪性細胞におけるアポトーシスを誘導することができるため、ロミデプシンと、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブとの組み合わせが癌の処置に有用であるかを試験したところ、本明細書に記載したように特に有効であることが分かった。ロミデプシンとボルテゾミブとの組み合わせは、悪性の血液系細胞を処置するのに特に有用であることが分かっている。本発明の組み合わせは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびその他の血液系悪性腫瘍を処置するのに有用である。また、本発明の組み合わせは、薬剤抵抗性を示す悪性腫瘍、例えば、ボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫、およびステロイド抵抗性の悪性腫瘍、例えばデキサメタゾン抵抗性多発性骨髄腫を処置するのにも有用であることが分かっている。
【0026】
これらの発見の基づき、本発明は、インビトロおよびインビボの両方において、本発明の組み合わせによって細胞を処置する方法を提供する。また、本発明は、本発明の組み合わせを含む医薬組成物およびキットも提供する。ある具体的な実施形態において、本発明の組み合わせはロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。
ロミデプシン
ロミデプシンは以下の化学式をもつ環状デプシペプチドである:
【0027】
【化3】
【0028】
。
ロミデプシンは任意の形状で提供することができる。薬学的に許容される形状が特に好適である。ロミデプシンの形状の例には、所望の活性(例えば、脱アセチル化酵素阻害活性、アグリソーム阻害、細胞傷害性)を有する塩、エステル、プロドラッグ、異性体、立体異性体(例えば、鏡像変異体、ジアステレオマー)、互変異性体、保護型、還元型、酸化型、誘導体、およびそれらを組み合わせたものが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態において、併用療法に使用されるロミデプシンは、医薬品等級の物質であり、かつ、米国薬局方、日本薬局方、および欧州薬局方の基準を満たすものである。ある実施形態において、ロミデプシンは、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%である。ある実施形態において、ロミデプシンは、純度が少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または少なくとも99.95%のモノマーである。ある実施形態において、ロミデプシンの材料(例えば、酸化された材料、還元された材料、二量体またはオリゴマーの材料、副生成物など)では、不純物は検出されない。ロミデプシンは、一般的に、全体のその他未知物質を1.0%未満、0.5%未満、0.2%未満、または0.1%未満含む。ロミデプシンの純度は、外観、HPLC法、比旋光度法、NMR分光法、IR分光法、紫外・可視分光法、粉末X線回折(XRPD)解析法、元素分析法、LC−質量分析法、および質量分析法によって評価することができる。
【0029】
本発明の併用療法は、ロミデプシンの誘導体を含むこともできる。ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(I)のものである:
【0030】
【化4】
【0031】
ただし、式中、
mは1、2、3、または4であり;
nは0、1、2、または3であり;
pおよびqは、それぞれ独立して1または2であり;
XはO、NH、またはNR8であり;
R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して水素;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の複素脂肪族化合物;非置換型か置換型のアリール;または非置換型か置換型の複素アリールであり;かつ、
R4、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して水素;または置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;およびその薬学的に許容される形状である。ある実施形態において、mは1である。ある実施形態において、nは1である。ある実施形態において、pは1である。ある実施形態において、qは1である。ある実施形態において、XはOである。ある実施形態において、R1、R2、およびR3は非置換型か置換型、分岐型か非分岐型の非環状脂肪族化合物である。ある実施形態において、R4、R5、R6、およびR7はすべて水素である。
【0032】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(II)のものである:
【0033】
【化5】
【0034】
ただし、式中、
mは1、2、3、または4であり;
nは0、1、2、または3であり;
qは2または3であり;
XはO、NH、またはNR8であり;
YはOR8またはSR8であり;
R2およびR3は、それぞれ独立して水素;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;非置換型か置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の複素脂肪族(heteroaliphatic)化合物;非置換型か置換型のアリール;または非置換型か置換型の複素アリールであり;
R4、R5、R6、R7、およびR8は、それぞれ独立して、水素;置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族化合物;およびその薬学的に許容される形状から選択される。ある実施形態において、mは1である。ある実施形態において、nは1である。ある実施形態において、qは2である。ある実施形態において、XはOである。他の実施形態において、XはNHである。ある実施形態において、R2およびR3は非置換型か置換型、分岐型か非分岐型の非環状脂肪族化合物である。ある実施形態において、R4、R5、R6、およびR7はすべて水素である。
【0035】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(III)のものである:
【0036】
【化6】
【0037】
ただし、式中、
Aは、生理学的条件下で切断されてチオール基を生じる部分であり、例えば、(チオエステル結合を形成するための)脂肪族または芳香族のアシル部分;(ジスルフィド結合を形成するための)脂肪族または芳香族のチオキシなど;およびその薬学的に許容される形状などが挙げられる。そのような脂肪族または芳香族の基には、置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族基;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基(heteroaromatic group);または置換型か非置換型の複素環基などを含み得る。Aは、例えば、−COR1、−SC(=O)−O−R1、または−SR2であってもよい。R1は独立して水素;置換型か非置換型のアミノ;置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基;または置換型か非置換型の複素環基である。ある実施形態において、R1は水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ベンジル、またはブロモベンジルである。R2は、置換型か非置換型、分岐型か非分岐型、環状か非環状の脂肪族基;置換型か非置換型の芳香族基;置換型か非置換型の複素芳香族基;または置換型か非置換型の複素環基である。ある実施形態において、R2はメチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、イソブチル、脂肪酸、置換型か非置換型のベンジル、置換型か非置換型のアリール、システイン、ホモシステイン、またはグルタチオンである。
【0038】
ある実施形態において、ロミデプシンの誘導体は、以下の化学式(IV)または(IV’)のものである:
【0039】
【化7】
【0040】
ただし、式中、
R1、R2、R3、およびR4は、同一であるか、相異なっており、アミノ酸側鎖部分を表しており、各R6は同一であるか相異なっており、水素またはC1〜C4アルキルを表しており、Pr1およびPr2は、同一であるか相異なっており、水素またはチオール保護基を表している。ある実施形態において、アミノ酸側鎖部分は天然型アミノ酸に由来するものである。別の実施形態において、アミノ酸側鎖部分は非天然型アミノ酸に由来するものである。ある実施形態において、各アミノ酸側鎖は、−H、−C1〜C6アルキル、−C2〜C6アルケニル、−L−O−C(O)−R’、−L−C(O)−O−R”、−L−A、−L−NR”R”、−L−Het−C(O)−Het−R”、および-L−Het−R”から選択された部分である。ただし、LはC1〜C6アルキレン基、Aはフェニルまたは5員もしくは6員の複素アリール基、各R’は同一であるか相異なっていて、C1〜C4アルキルを表し、各R”は同一であるか相異なっていて、HまたはC1〜C6アルキルを表し、各−Het−は同一であるか相異なっていて、−O−、−N(R’’’)−、および−S−から選択される複素原子スペーサーであり、各R’’’は同一であるか相異なっていて、HまたはC1〜C4アルキルを表している。ある実施形態において、R6は−Hである。ある実施形態において、Pr1およびPr2は同一であるか相異なっており、水素、およびC1〜C6アルコキシによって任意で置換されているベンジル基、C1〜C6アシルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ピコリル、ピコリル−N−オキシド、アントリルメチル、ジフェニルメチル、フェニル、t−ブチル、アダマンチル、C1〜C6アシルオキシメチル、C1〜C6アルコキシメチル、テトラヒドロピラニル、ベンジルチオメチル、フェニルチオメチル、チアゾリジン、アセトアミドメチル、ベンズアミドメチル、三級ブトキシカルボニル(BOC)、アセチルおよびその誘導体、ベンゾイルおよびその誘導体、カルバモイル、フェニルカルバモイル、ならびにC1〜C6アルキルカルバモイルから選択される保護基から選択される。ある実施形態において、Pr1およびPr2は水素である。化学式(IV)および(IV’)をもつ、さまざまなロミデプシン誘導体が、2006年12月7日に公開されたPCT出願国際公開公報第2006/129105号に開示されており;参照されて本明細書に組み込まれる。
【0041】
ロミデプシンを調製する方法は、当技術分野において知られている。例えば、ロミデプシンを調製する方法の例が、2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,698号;2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,704号;および2006年12月29日に出願された米国特許出願第60/882,712号に記載されおり、その教示内容は、すべて参照されて本明細書に組み込まれる。ロミデプシンは天然産物であるため、一般的には、これを産生する微生物の発酵物から、これを単離して調製する。ある実施形態において、ロミデプシンまたはその誘導体を、例えば、クロモバクテリウム・ビオラセウムの発酵物から精製する。例えば、Uedaら、J.Antibiot.(Tokyo)47:301−310,1994;Nakajimaら、Exp.Cell Res.241:126−133,1998;国際公開公報第02/20817号;米国特許第4,977,138号参照;これらは、それぞれ参照されて本明細書に組み込まれる。別の実施形態において、ロミデプシンまたはその誘導体は、合成法または半合成法によって調製される。J.Am.Chem.Soc.118:7237−7238,1996;これは、参照されて本明細書に組み込まれる。
【0042】
併用療法に含まれるロミデプシンの治療上有効な量は、患者、処置対象となっている癌または新生物、癌の病期、癌または新生物の病態、癌または新生物の遺伝子型、癌または腫瘍の表現型、投与経路などに応じて変わる。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜28mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜25mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、1mg/m2〜8mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、0.5mg/m2〜5mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、2mg/m2〜10mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、4mg/m2〜15mg/m2の範囲で投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、8mg/m2〜10mg/m2の範囲で投与される。別の実施形態において、投薬量は、10mg/m2〜20mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、5mg/m2〜10mg/m2の範囲である。別の実施形態において、投薬量は、10mg/m2〜15mg/m2の範囲である。さらに別の実施形態において、投薬量は約8mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約9mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約10mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約11mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約12mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約13mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約14mg/m2である。さらに別の実施形態において、投薬量は約15mg/m2である。ある実施形態において、投薬サイクルの間、ロミデプシンの用量を増加させて投与する。例えば、ある実施形態において、約8mg/m2の用量、その後、約10mg/m2の用量、その後、約12mg/m2の用量を1サイクル(a cycle)の間に投与してもよい。当業者には理解されるが、投与されるロミデプシンの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載されている投薬量は、活性成分であるロミデプシンについての等価用量である。当業者には理解されるが、一層多くの塩、水和物、共結晶、プロドラッグ、エステル、溶質などを投与して、等価数のロミデプシン分子を送達する必要があり得る。ある実施形態において、ロミデプシンを静脈内に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを1〜6時間かけて静脈内に投与する。ある具体的な実施形態において、ロミデプシンを3〜4時間かけて静脈内に投与する。ある具体的な実施形態において、ロミデプシンを5〜6時間かけて静脈内に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを1日投与し、その後数日間ロミデプシンを投与しない。ある実施形態において、ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターは一緒に投与される。別の実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは別々に投与される。例えば、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与は、一日以上の間隔を置くことができる。ある実施形態において、ロミデプシンを週2回投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを週1回投与する。別の実施形態において、ロミデプシンを2週間に1回に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に投与する。ある具体的な実施形態において、8mg/m2の用量のロミデプシンを1日目に投与し、10mg/m2の用量のロミデプシンを8日目に投与し、12mg/m2の用量のロミデプシンを15日目に投与する。ある実施形態において、ロミデプシンを28日サイクルの1日目および15日目に投与する。この28日サイクルを反復することができる。ある実施形態において、28日サイクルを3〜10回反復する。ある実施形態において、処置は5サイクルを含む。ある実施形態において、処置は6サイクルを含む。ある実施形態において、処置は7サイクルを含む。ある実施形態において、処置は8サイクルを含む。ある実施形態において、10サイクルよりも多く投与される。ある実施形態において、患者が応答している限り、サイクルを続ける。疾患の進行が見られたり、治癒または寛解が達成されたり、副作用が許容できなくなったりしたところで、この治療を終わらせることができる。
【0043】
あるいは、ロミデプシンは経口投与することができる。ある実施形態において、ロミデプシンは、10mg/m2〜300mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、25mg/m2〜100mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、100mg/m2〜200mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、200mg/m2〜300mg/m2の範囲で経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは300mg/m2を超えて経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは、50mg/m2〜150mg/m2の範囲で経口投与される。別の実施形態において、経口投与量の範囲は、25mg/m2〜75mg/m2である。当業者には理解されるが、投与されるロミデプシンの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載されている投薬量は、活性成分であるロミデプシンについての等価用量である。ある実施形態において、ロミデプシンは、1日1回ずつ経口投与される。別の実施形態において、ロミデプシンは、1日おきに経口投与される。さらに別の実施形態において、ロミデプシンは、3日おき、4日おき、5日おき、または6日おきに経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは週に1回ずつ経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンは2週間に1回に経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは一緒に投与される。別の実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターは別々に投与される。例えば、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与は、一日以上の間隔を置くことができる。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターはともに経口投与される。ある実施形態において、ロミデプシンだけが経口投与される。疾患の進行が見られたり、治癒または寛解が達成されたり、副作用が許容できなくなったりしたところで、ロミデプシンの単独投与、またはロミデプシンとプロテアソームインヒビターの組み合わせの投与を終わらせることができる。
プロテアソームインヒビター
プロテアソームは、ほとんどの細胞基質、小胞体、および核タンパク質を分解する多サブユニットプロテアーゼである。KisselevおよびGoldberg、“Proteasome inhibitors: from research tools to drug candidates” Chem.Biol.8:739−58,2001;これは参照されて本明細書に組み込まれる。ユビキチン標識されたタンパク質は折りたたまれずに、さまざまなタンパク質分解活性部位を有するプロテアソームの中心部を通って食される。
【0044】
癌またはその他の新生物の処置において、任意のプロテアソームインヒビターをロミデプシンと組み合わせることができる。プロテアソームインヒビターは、一般的に、ロミデプシンと相乗的に、または相加的に相互作用して、腫瘍性の細胞または悪性細胞を死滅させる。相乗作用があれば、癌または別の新生物の処置においてプロテアソームインヒビターを単独で投与する場合に通常使用されるよりも低用量のプロテアソームインヒビターの使用が可能になる。ある実施形態において、プロテアソームインヒビターは、ロミデプシンと相乗的に相互作用して、腫瘍性の細胞または悪性細胞においてアポトーシスを誘導することができる。ある実施形態において、この組み合わせが相乗的に作用して酸化的傷害を誘導する。
【0045】
プロテアソームインヒビターの例には、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI−0052)、ラクタシスチン、エポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)、MG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)、PR−171、PS−519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP−1612、CVT−63417、PS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)、PSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)、MG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)、PS−273(MNLB)、オムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)、NLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)、YLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)、ALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)、3,4−ジクロロイソクマリン、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド、TMC−95A、グリオトキシン、EGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)、およびYU101(Ac−hFLFL−ex)などが含まれる。ある実施形態において、ロミデプシンをボルテゾミブ(登録商標VELCADE)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをサリノスポラミドA(NPI−0052)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをラクタシスチンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをエポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをMG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPR−171と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−519と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをエポネマイシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをアクラシノマイシンAと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをCEP−1612と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをCVT−63417と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをMG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−273(MNLB)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをオムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをNLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをPS−273(MNLB)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをYLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをジヒドロエポネマイシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをDFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンを3,4−ジクロロイソクマリンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンを4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリドと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをTMC−95Aと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをグリオトキシンと組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをEGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)と組み合わせる。ある実施形態において、ロミデプシンをYU101(Ac−hFLFL−ex)と組み合わせる。
【0046】
ある具体的な実施形態において、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブをロミデプシンと組み合わせる。ボルテゾミブは、[(1R)−3−メチル−1−[[(2S)−1−オキソ−3−フェニル−2−[(ピラジニルカルボニル)アミノ]プロピル]アミノ]ブチル]ボロン酸という化学名をもち、次の化学式からなる:
【0047】
【化8】
【0048】
。
ボルテゾミブは、ロミデプシンと同時に、ロミデプシンに続いて、またはロミデプシンの前に投与することができる。ボルテゾミブは、一般的には、静脈内ボーラスとして非経口的に投与される。ある実施形態において、ボルテゾミブの投薬量は、0.1〜10mg/m2の範囲である。ある実施形態において、ボルテゾミブの投薬量は、0.1〜5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、1〜5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.1〜1mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜1.5mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜1.0mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は、0.5〜3.0mg/m2の範囲である。ある実施形態において、投薬量は約0.7mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約0.8mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約0.9mg/m2である。ある実施形態において、投薬量は約1.0mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.1mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.2mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.3mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.4mg/m2である。ある別の実施形態において、投薬量は約1.5mg/m2である。当業者には理解されるが、投与されるボルテゾミブの形状に応じて、投与法を変えることができる。本明細書に記載された投薬量は、活性成分であるボルテゾミブについて等価用量である。一般的には、ボルテゾミブを投与した後には、休止期間をおく。休止期間は2日から14日でよい。ある実施形態において、休止期間は少なくとも24時間、48時間、または72時間である。ある実施形態において、休止期間は1週間である。ある実施形態において、ボルテゾミブを2週間に1回に投与する。ある実施形態において、ボルテゾミブを週1回投与する。ある具体的な実施形態において、ボルテゾミブを週1回ずつ4週間投与する。別の実施形態において、ボルテゾミブを週2回投与する。ある実施形態において、ボルテゾミブを、週2回ずつ2週間(1日目、4日目、8日目、および11日目に)投与し、その後、10日間の休止期間をおく。ある実施形態において、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目にボルテゾミブを投与する。処置サイクルは、3週間から10週間の範囲とすることができる。ある実施形態において、処置サイクルは3週間である。別の実施形態において、処置サイクルは4週間である。別の実施形態において、処置サイクルは5週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは6週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは7週間である。さらに別の実施形態において、処置サイクルは8週間である。ある実施形態において、患者が応答するかぎり処置サイクルを継続する。疾患の進行がみられたり、治癒または寛解が達成されたり、または副作用が許容できなくなったりしたところで、処置を終わらせることができる。
抗腫瘍性剤およびステロイド剤
本発明に適する抗腫瘍性剤には、悪性細胞の成熟および増殖を抑制して、新生物の増殖を阻害または防止する薬剤などがある。増殖阻害は、腫瘍性の細胞の静止または細胞死を誘導することによって生じさせることができる。一般的には、抗腫瘍性剤は、通常の細胞傷害性剤などである。抗腫瘍性剤の例には、サイトカイン、リガンド、抗体、放射性核種、および化学療法剤などがあるが、これらに限定されない。具体的には、そのような薬剤は、インターロイキン2(IL−2)、インターフェロン(IFN)TNF;アルミニウム(III)フタロシアニンテトラスルホン酸、ヘマトポルフィリン、およびフタロシアニンなどの光増感剤;ヨウ素−131(131I)、イットリウム−90(90Y)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、テクネチウム−99m(99mTc)、レニウム−186(186Re)、およびレニウム−188(188Re)などの放射性核種;ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、ダウノマイシン、ネオカルチノスタチン、およびカルボプラチンなどの化学療法剤;ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素A、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アブリン−A毒素、リシンA(脱グリコシル化リシンAおよび天然リシンA)、TGF−アルファ毒素、中国コブラ(台湾コブラ)由来の細胞毒、およびゲロニン(植物毒素)などの細菌性、植物性、またはその他の毒素;レストリクトシン(アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)によって産生されるリボソーム不活性化タンパク質)、サポリン(サボンソウ(Saponaria officinalis)由来のリボソーム不活性化タンパク質)、およびRNA分解酵素など、植物、細菌および真菌に由来するリボソーム不活性化タンパク質;、チロシンキナーゼインヒビター;ly207702(二フッ素化プリンヌクレオシド);抗腫瘍性剤(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、毒素をコードするプラスミド、メトトレキサートなど)を含有するリポソーム;ならびにその他の抗体または抗体断片、例えば、F(ab)などが挙げられる。
【0049】
本発明に適するステロイド剤の例には、ジプロピオン酸アルクロメタゾン(alclometasone diproprionate)、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(beclomethasone diproprionate)、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン(betamethasone diproprionate)、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、またはその合成アナログ、もしくはそれらを組み合わせしたものなどがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明に適したステロイド剤は、デキサメタゾンである。ある実施形態において、本発明に適したステロイド剤は、プレドニゾロンである。
【0050】
ある実施形態において、ステロイド剤を0.25mg〜100mgの投薬量の範囲で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を5mg〜60mgの投薬量の範囲で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を10mg〜50mgの投薬量の範囲で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約40mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約30mgの投薬量で投与する。別の具体的な実施形態において、ステロイド剤を約20mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約10mgの投薬量で投与する。具体的な実施形態において、ステロイド剤を約5mgの投薬量で投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターと同時に投与する。ある実施形態において、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する前か後に投与する。例えば、ステロイド剤を、ロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターを投与する5〜7日前に投与することができる。ある実施形態において、ステロイド剤はデキサメタゾンであり、デキサメタゾンの投与量は20mgである。
用途
ロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターの組み合わせは、インビボまたはインビトロで使用することができる。本発明の組み合わせは、インビボにおける新生物の処置において特に有用である。しかし、この組み合わせを、研究目的または臨床目的(例えば、本発明の組み合わせに対する患者の疾患の感受性の測定、作用機序の研究、細胞経路または細胞過程の解明)のためにインビトロで利用することもできる。ある実施形態において、新生物は良性新生物である。別の実施形態において、新生物は悪性新生物である。本発明の組み合わせを使用して、任意の癌を処置することができる。
【0051】
ある実施形態において、悪性腫瘍は血液系悪性腫瘍である。血液系悪性腫瘍は、血液、骨髄、および/またはリンパ節を冒すタイプの癌である。本発明の併用療法を用いて処置することができる悪性腫瘍の例には、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T−cell lymphoma)(CTCL)、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、および多発性骨髄腫などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて多発性骨髄腫を処置する。ある具体的な実施形態において、癌は、再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である。別の実施形態では、本発明の組み合わせを用いて、慢性リンパ球性白血病(CLL)を処置する。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を処置する。ある実施形態において、本発明の組み合わせを用いて、急性骨髄性白血病(AML)を処置する。ある実施形態において、癌は皮膚T細胞リンパ腫である。別の実施形態において、癌は末梢T細胞リンパ腫である。
【0052】
血液系悪性腫瘍以外の別の癌も、本発明の組み合わせを使用して処置することができる。ある実施形態において、癌は固形腫瘍である。併用療法を用いて処置することができる癌の例には、結腸癌、肺癌、骨癌、膵臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、脳癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、神経内分泌の癌などがあげられる。ある実施形態において、本発明の組み合わせは膵臓癌を処置するために用いられる。ある実施形態において、本発明の組み合わせは前立腺癌を処置するために用いられる。ある具体的な実施形態において、前立腺癌は、ホルモン治療不応性の前立腺癌である。
【0053】
また、併用療法を用いて、難治性または再発性の悪性腫瘍を処置することもできる。ある実施形態において、癌は、難治性および/または再発性の血液系悪性腫瘍である。例えば、癌が特定の化学療法剤に対して抵抗性であってもよい。ある実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の悪性腫瘍である。ある具体的な実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の血液系悪性腫瘍である。ある具体的な実施形態において、癌はボルテゾミブ抵抗性の多発性骨髄腫である。ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせは、ボルテゾミブ抵抗性多発性骨髄腫のような、ボルテゾミブ抵抗性血液系悪性腫瘍を処置するのに特に有用であることが分かっている。別の実施形態において、癌は、ステロイド処置に対して抵抗性である。ある実施形態において、癌は、ステロイド処置に対して抵抗性を示す血液系悪性腫瘍である。ある実施形態において、癌は、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫である。ある具体的な実施形態において、癌は、デキサメタゾン抵抗性の多発性骨髄腫である。ある具体的な実施形態において、癌は、プレドニゾロン抵抗性の多発性骨髄腫である。
【0054】
また、ロミデプシンにプロテアソームインヒビターを加えた本発明の組み合わせを使用して、インビトロにおいて細胞を処理および/または死滅させることができる。ある実施形態において、細胞を死滅させるために、細胞傷害性濃度の薬剤の組み合わせを細胞に接触させる。別の実施形態において、致死性濃度よりも低い濃度の組み合わせを使用して細胞を処理する。ある実施形態において、薬剤の組み合わせは、相加的に作用して細胞を死滅させる。ある実施形態において、薬剤の組み合わせは、相乗的に作用して、細胞を死滅させる。そのため、細胞を死滅させるためには、どちらかの薬剤を単独で使用した場合に必要とされるよりも低い濃度での一方または両方の薬剤が必要である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、0.01nM〜100nMの範囲である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、0.1nM〜50nMの範囲である。ある実施形態において、ロミデプシンの濃度は、1nM〜10nMの範囲である。ある実施形態において、各薬剤の濃度は、1nM〜10nM、より具体的には1nM〜5nMの範囲である。ある実施形態において、プロテアソームインヒビターであるボルテゾミブの濃度は1nM〜10nM、より具体的には1nM〜5nMの範囲である。
【0055】
併用療法(すなわち、ロミデプシンとプロテアソームインヒビター(例えば、ボルテゾミブ))によって、任意の種類の細胞を試験したり死滅させたりすることができる。細胞は、任意の動物、植物、細菌、または真菌源に由来するものであってもよい。細胞は、どのような分化または成長の段階にあってもよい。ある実施形態において、細胞は動物細胞である。ある実施形態において、細胞は脊椎動物細胞である。ある実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。ある実施形態において、細胞はヒト細胞である。これらの細胞は、任意の成長段階にある男性または女性から得ることができる。ある実施形態において、細胞は霊長動物細胞である。別の実施形態において、細胞は齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、アレチネズミ)に由来するものである。ある実施形態において、細胞は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ブタなどの家畜動物に由来するものである。また、細胞は、遺伝子操作された動物または植物、例えば、トランスジェニックマウスなどに由来するものであってもよい。
【0056】
使用される細胞は、野生型細胞であっても変異型細胞であってもよい。これらの細胞は遺伝子操作されたものであってもよい。ある実施形態において、細胞は正常細胞である。ある実施形態において、細胞は血液系細胞である。ある実施形態において、細胞は白血球である。ある具体的な実施形態において、細胞は白血球の前駆細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、芽細胞)である。ある実施形態において、細胞は腫瘍性の細胞である。ある実施形態において、細胞は癌細胞である。ある実施形態において、細胞は血液系悪性腫瘍に由来するものである。別の実施形態において、細胞は固形腫瘍に由来するものである。例えば、細胞は、(例えば、生検切除または外科的切除による)患者の腫瘍に由来するものであってもよい。ある実施形態において、細胞は、被検体から得られた血液サンプル、または骨髄生検から得られる。ある実施形態において、細胞はリンパ節生検から得られる。細胞傷害性について、そのような試験をすることは、患者が特定の併用療法に応答するか否かを決定するのに有用であり得る。そのような試験は、悪性腫瘍を処置するのに必要な投薬量を決定するのにも有用であり得る。併用療法に対する患者の癌の感受性をこのように試験すると、患者に全く効果のない薬剤を不必要に患者に投与することを防止する。また、この試験によって、患者の癌が、組み合わせに対して特に感受性がある場合には、薬剤の一方または両方をより低い用量で使用することも可能になる。
【0057】
別の実施形態において、細胞は、癌細胞株に由来するものである。ある実施形態において、細胞は、本明細書において考察されているような血液系悪性腫瘍に由来するものである。ヒト白血病細胞株は、U937、HL−60、THP−1、Raji、CCRF−CEM、およびジャーカットなどである。CLL細胞株の例には、JVM−3およびMEC−2などがある。骨髄腫細胞株の例は、MM1.S、MM1.R(デキサメタゾン抵抗性)、RPMI8226、NCI−H929、およびU266などである。リンパ腫細胞株の例は、カルパス、SUDH−6、SUDH−16、L428、KMH2、およびグランタ(Granta)マントルリンパ腫細胞株などである。ある実施形態において、細胞は、AML細胞または多発性骨髄腫(CD138+)細胞である。ある実施形態において、細胞は、造血幹細胞または造血前駆細胞である。例えば、ある実施形態において、細胞は、CD34+骨髄細胞などの造血前駆細胞である。ある実施形態において、細胞株は、特定の化学療法剤に対して抵抗性を示すものである。ある具体的な実施形態において、細胞株は、ボルテゾミブに対して抵抗性を示す。別の実施形態において、細胞株はステロイド抵抗性(例えば、デキサメタゾン抵抗性、プレドニゾロン抵抗性)である。ある具体的な実施形態において、細胞は、ステロイド抵抗性ヒト多発性骨髄腫細胞である。
【0058】
本発明の併用療法で処理された細胞においては、さまざまなマーカーについてアッセイすることができる。例えば、マーカーであるアネキシンVを利用して、アポトーシスを起こしている細胞を同定することができる。NF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質は、本併用療法によって下方制御されることが示されている。アッセイすることができる抗アポトーシスタンパク質は、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPなどである。ある実施形態において、細胞内でNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIP)を下方制御するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせが、ストレスに関連するJNK経路を活性化することが明らかになっているため、p−JNKなど、JNK経路のタンパク質もアッセイすることができる。ある実施形態では、細胞内でJNK経路を活性化するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。ある実施形態では、細胞内でカスパーゼ−12の切断を誘導するのに有効な量のロミデプシンと、ボルテゾミブなどプロテアソームインヒビターによって細胞を処理する。
医薬組成物
また、本発明は、組み合わせることによって血液系悪性腫瘍など腫瘍性の細胞に対して細胞増殖抑制活性または細胞傷害性活性を示す、本明細書に記載されているロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターを含む医薬組成物、調製物、またはキットも提供する。これらの医薬組成物、調製物、またはキットは、一般的に、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターを投与するのに適した量を含む。ある実施形態において、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターを、同一組成物に混合しない。例えば、これら2つの薬剤は、同一の液体または粉末の一部としない。一般的には、これら2つの薬剤は、2つの異なる組成物に分けておき、別々に送達する。キットは、ロミデプシンの医薬組成物と、別にプロテアソームインヒビターの医薬組成物とを含むことが可能である。ある具体的な実施形態において、医薬組成物、調製物、またはキットは、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む。ある実施形態において、これら2つの医薬の間で相乗作用が生じる場合、一方または両方の薬剤の量は、薬剤を単独で投与する場合に投与される量よりも低量である。ある実施形態において、両方の薬剤ともより低量である。ある実施形態において、投与される量は、被検体の血中でナノモルレベル(nanomolar level)となるのに十分な量である。ある実施形態において、投与される量は、被検体の癌またはその他の新生物の部位においてナノモル濃度となるのに十分な量である。ロミデプシンおよびボルテゾミブそれぞれの用量は、上記で詳細に記載されている。
【0059】
上記で考察したように、本発明は、細胞傷害性活性をもつ、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの新規の組み合わせを提供し、それゆえ、本発明の化合物は、癌およびその他の新生物を含む、さまざまな病状を処置するのに役立つ。ある実施形態において、本薬剤は相乗的に作用して癌細胞を死滅させる。別の実施形態において、本薬剤は相加的に作用して癌細胞を死滅させる。
【0060】
本発明の医薬組成物、調製物、またはキットは、他の治療剤を含むことができる。他の医薬は、被検体に投与するのに有用である、任意の別の治療剤であろう。他の治療剤は、好ましくは、投与されるロミデプシンまたはプロテアソームインヒビターと有害な相互作用をしない。ある実施形態において、本発明は、一つ以上の他の治療剤、例えば、別の細胞傷害性剤、ステロイド剤、鎮痛剤などを組み合わせした、ロミデプシンとプロテアソームインヒビターの投与を提供する。ある実施形態において、他の治療剤は、別の化学療法剤である。ある実施形態において、他の治療剤はステロイド剤(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、プレドニソロン)である。他の治療剤には、ロミデプシンおよび/またはプロテアソームインヒビターの副作用を緩和もしくは軽減する薬剤が含まれ得る。ある実施形態において、他の治療剤は、アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどの抗炎症剤、鎮痛剤、抗吐剤、または解熱剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、悪心、嘔吐、胃の不調、および下痢などの胃腸障害を処置するための薬剤である。これらの付加的薬剤には、制吐剤、下痢止め、液置換(fluid replacement)、電解質置換などが含まれる。ある具体的な実施形態において、他の治療剤は、カリウム、マグネシウム、およびカルシウム、特に、カリウム、およびマグネシウムなどの電解質置換または電解質補充である。ある実施形態において、他の治療剤は抗不整脈剤である。ある実施形態において、他の治療剤は血小板増強剤(platelet booster)、例えば、血小板の産生および/または放出を増加させる薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、エリスロポエチンなど、血球の産生を促進する薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は、高血糖を抑制するための薬剤である。ある実施形態において、他の治療剤は免疫系刺激剤である。ある実施形態において、本発明は、ロミデプシン以外のHDACインヒビターの投与を含まない。
【0061】
また、当然のことながら、本発明に従って利用される薬剤のうちのあるものは、処置のために特別な制限を受けない形状で存在しうるか、または特定の場合、その薬学的に許容される形態として存在しうる。本発明によれば、薬学的に許容される形状には、薬学的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩、保護型、立体異性体、異性体、還元型、酸化型、互変異性体、または必要とする患者に投与されると、本明細書において別様に記載されている薬剤を直接的または間接的に提供することができる、その他の任意の付加物もしくは誘導体、またはそれらの代謝物もしくは残留物(residue)、例えば、プロドラッグなどがあるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書において用いる場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよびその他の動物の組織に接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な利益/リスク比に適合する塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野においてよく知られている。例えば、S.M.Bergeらが、J. Pharmaceutical Sciences,66:1−19,1977において薬学的に許容される塩を詳細に記載しており;これは、参照されて本明細書に組み込まれる。これらの塩は、本発明の化合物を最終的に単離および精製する過程において原位置で調製するか、または遊離塩基型官能基を適当な有機酸または無機酸と反応させることによって別々に調製することができる。薬学的に許容される無毒性酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸によって形成されるアミノ基の塩、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸によって形成されるアミノ基の塩、またはイオン交換法など、当技術分野において利用されているその他の方法を用いて形成されるアミノ基の塩である。その他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などがあげられる。代表的なアルカリ塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあげられる。さらなる薬学的に許容される塩には、特定の場合、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、およびハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを用いて形成されるアミンカチオンなどがあげられる。
【0063】
さらに、本明細書において用いる場合、「薬学的に許容されるエステル」という用語は、インビボで加水分解するエステルを意味し、ヒトの体内で直ちに分解して親化合物またはその塩を残すものが含まれる。適当なエステル基は、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸に由来する基であり、具体的には、アルキル部分またはアルケニル部分のそれぞれが、有利には、6個よりも多い炭素原子をもたないアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸およびアルカン二酸(alkanedioic acid)などである。特定のエステルの例は、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、アクリル酸塩、およびエチルコハク酸塩を含む。ある実施形態において、これらのエステルは、エステラーゼなどの酵素によって切断される。
【0064】
さらに、本明細書において用いる場合、「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよびその他の動物の組織に接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な利益/リスク比に適合し、かつ使用目的にとって有効な、本発明に従って使用される化合物のプロドラッグを意味する。「プロドラッグ」という用語は、例えば、血液中での加水分解によって、インビボで急速に変換されて上記の化学式の親化合物を生じさせる化合物を意味する。T.HiguchiおよびV.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series、およびEdward B.Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987には徹底的な考察が記載されており、これらは、いずれも参照されて本明細書に組み込まれる。
【0065】
上記したとおり、本発明の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含むが、本明細書において用いる場合、それらは、所望の特定の投薬形状に適する溶媒、希釈剤、またはその他の液体溶媒、分散補助剤または懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固形結合剤、潤滑剤、浸透増進剤、可溶化剤などである。Remington‘s Pharmaceutical Sciences,Fifteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton, Pa.,1975)には、医薬組成物の処方に利用されるさまざまな担体、およびそれらを調製するための既知の技術が開示されている。従来からの担体媒質が、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生じるか、さもなければ、医薬組成物のその他の成分(一つまたは複数)と有害な局面で相互作用するかして、本発明の抗癌化合物には適合しないというのでない限り、その使用は本発明の範囲内にあるものとみなされる。薬学的に許容される担体として使用することができる物質のいくつかの例には、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;コーンスターチおよびポテトスターチなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;クレモホル(ポリエトキシル化ヒマシ油(caster oil));ソルトール(Solutol)(12−ヒドロキシステアリン酸のポリオキシエチレンエステル);ココアバターおよび座薬用ワックスなどの賦形剤;落花生油および綿実油などの油脂、紅花油;胡麻油;オリーブ油;コーン油;大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、また、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの無毒性の適合潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、風味料、および香料、保存剤、および抗酸化剤も、処方者の判断に従って組成物に入れることができる。
【0066】
これらおよびその他の本発明の局面は、以下の実施例を考慮すると、より深く理解することができる。ただし、以下の実施例は、本発明のある具体的な実施形態を記載するためのものであり、本特許請求の範囲によって規定されるように、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0067】
(実施例1)多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせ
方法。ヒト骨髄腫のU266細胞およびRPMI8226細胞を、3〜4nMの登録商標VELCADE(ボルテゾミブ)の非存在下または存在下で、2〜3nMのロミデプシン(FK288)に48時間曝露し、その後、アネキシンV+染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシス細胞の割合を測定した。初代CD138+骨髄腫細胞を、多発性骨髄腫患者の骨髄サンプルから単離した。次に、CD138+細胞およびCD138−細胞を、3nMのロミデプシン±3nMのボルテゾミブで24時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。デキサメタゾン感受性ヒト骨髄腫細胞(MM.1S)およびデキサメタゾン抵抗性ヒト骨髄腫細胞(MM.1R)を、1nMのロミデプシン±2nMのボルテゾミブに24時間曝露し、その後、アネキシンV+染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシス細胞の割合を測定した。12nMの濃度に達すまでボルテゾミブの濃度を徐々に高めながらU266細胞を培養して、ボルテゾミブ抵抗性細胞(U266/PS−R)を作製した。次に、5〜15nMのボルテゾミブの非存在下または存在下で、U266/PS−R細胞を2nMのロミデプシンで48時間処理し、その後、アネキシンV−FITC染色法およびフローサイトメトリーによってアポトーシスを評価した。ヒト多発性骨髄腫細胞(U266)を2nMロミデプシン±3nMのボルテゾミブに48時間曝露し、その後、イムノブロット解析を行って、JNK活性化、およびNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の発現をモニターした。
【0068】
結果。極めて低い(ナノモル)濃度で投与されたボルテゾミブとロミデプシンは、相乗的に相互作用して、ヒト多発性骨髄腫細胞株においてアポトーシスを誘導する(図1)。さらに、極めて低濃度で投与されたボルテゾミブとロミデプシンの組み合わせは、初代ヒト多発性骨髄腫細胞においてアポトーシスを誘導するが、正常な骨髄細胞は傷つけないため、治療選択性の根拠となる可能性を示唆している(図2)。これら2つの薬剤を極めて低い(ナノモル)濃度で投与すると、ステロイド抵抗性の多発性骨髄腫細胞において、ロミデプシンがボルテゾミブの致死性を増強すると考えられている(図3)。また、ロミデプシンは、ボルテゾミブ単独には抵抗性を示す多発性骨髄腫細胞においてボルテゾミブの致死性を増強する(図4)。ヒト多発性骨髄腫細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの間の相乗的相互作用は、ストレス関連JNK経路の活性化と、いくつかのNK−κB依存性抗アポトーシスタンパク質(例えば、A1、Bcl−xL、およびXIAP)の下方制御とを伴う(図5)。
【0069】
結論。ロミデプシンおよびボルテゾミブは、極めて低濃度(例えば、低nM)で同時に投与されると相乗的に相互作用して、培養された多発性骨髄腫細胞および初代多発性骨髄腫細胞(ステロイドまたはボルテゾミブに抵抗性を示すものを含む)においてアポトーシスを誘導する。これらの作用は、ストレス関連JNK経路の活性化およびNK−κB依存性抗アポトーシスタンパク質の下方制御を伴う。これらの知見は、ロミデプシンおよびボルテゾミブを含む組み合わせのレジメンが、多発性骨髄腫患者を処置する際の有効な方策となりうることを示している。
(実施例2)慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞におけるロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせ
方法。初代CLL細胞を5人のCLL患者から単離し、最低毒性濃度のボルテゾミブ(3nM)±ロミデプシン(3〜5nM)に24時間曝露し、その後、7AAD染色法/フローサイトメトリー、および光学顕微鏡下におけるライト−ギムザ染色されたサイトスピンスライドによって、細胞死を測定した。イムノブロット解析(条件当たり30μgのタンパク質)を行って、カスパーゼ−12およびPARPの切断、IκBαのレベル、ホスホ−IκBαのレベル、p65のレベル、p100/p52のレベル、ならびにNF−κBの下流にある抗アポトーシスタンパク質の発現を検出した。2つの樹立CLL細胞株(JVM−3およびMEC−2、DSMZ)において並行研究を行った。細胞を、毒性濃度よりも低い濃度のボルテゾミブ(JVM−3、3nM;MEC−2、5nM)およびロミデプシン(JVM−3、3nM;MEC−2、5nM)によって48時間同時処理し、その後、それぞれアネキシンV/PI染色またはアネキシンV/DiOC6染色した後、フローサイトメトリーによって、アポトーシス細胞と、ミトコンドリア膜電位(ΔΨm)が失われた細胞の割合を測定した。固定濃度比(1:1)でボルテゾミブおよびロミデプシンを投与した後、市販のソフトウェアプログラム(Calcusyn;Biosoft)を用いて、用量中央値効果(Median Dose Effect)解析法によって、これらの薬剤の相乗性を評価した。Amaxa Nucleofectorデバイス(U−15プログラム)を使用して、一過性トランスフェクションを行い、ヒトB細胞Nucleofectorキットを使用して、NF−κB活性、および不活性型RelA/p65変異体(アセチル化部位変異体)の機能的作用を評価した。
【0070】
結果。低濃度(3nM)で投与されたボルテゾミブとロミデプシンによる組み合わせ処理は、初代CLL細胞においてアポトーシスおよびカスパーゼ−12切断を強力に誘導する(図6)。ロミデプシンは、5種類の初代CLLサンプル中の4例において、ボルテゾミブの致死性を劇的に増加させ、1つのサンプルにおいて相加的致死性をもたらした(図7)。毒性濃度よりも低い濃度(例えば、2〜5nM)でロミデプシンとボルテゾミブを同時に投与したところ、CLL細胞株(JVM−3およびMEC−2)においてアポトーシスが劇的に誘導された。高度の相乗的相互作用が、用量中央値効果解析によって記録された(図8)。ロミデプシンは単独で、初代CLL細胞においてNF−κB活性を活性化したが、これは、ボルテゾミブとの同時投与によって阻害された一作用であった。ボルテゾミブはまた、NF−κB2前駆体であるp100をその活性型であるp52にする、ロミデプシンが介在するプロセッシングを遮断した。ボルテゾミブとロミデプシンの同時投与によって、A1、Bcl−xL、XAIP、cIAP1、cIAP2、c−FLIP、およびICAM−1など、複数のNF−κBの下流にある生存タンパク質の発現が下方制御された。ボルテゾミブ処理単独では、Mcl−1蓄積を誘導したが、これは、ロミデプシンに同時曝露された細胞内では減少した。この組み合わせは、抗アポトーシスタンパク質であるサバイビンの切断ももたらした(図9)。
【0071】
結論。ぎりぎりの毒性濃度のロミデプシンとボルテゾミブを同時に投与すると、初代ヒトCLL細胞およびCLL細胞株において、高度に相乗的なアポトーシス誘導が起きる。これらの事象は、NF−κB経路の破壊、およびBcl−2ファミリーの複数の抗アポトーシスメンバーの下方制御を伴う。まとめると、これらの知見は、ロミデプシンとボルテゾミブを含む組み合わせレジメンが難治性CLL患者を処置する際の有効な戦略であり得るという可能性を提起するものである。
(実施例3)ロミデプシンとボルテゾミブを組み合わせて用いた多発性骨髄腫の処置
ロミデプシンとボルテゾミブを組み合わせて用いて、ヒト臨床試験において多発性骨髄腫(MM)患者を処置した。この臨床試験は、再発性または難治性の多発性骨髄腫を患う患者におけるボルテゾミブ、デキサメタゾン、およびロミデプシン(デプシペプチド、FK228)の非盲検、単一施設、単一群の第I/II相の用量漸増試験(dose escalation trial)であり、その後、病勢悪化までロミデプシン治療を維持した。図10に試験デザインを示す。
【0072】
この臨床試験の目的は、再発性多発性骨髄腫患者における、ボルテゾミブとともに投与されるロミデプシンの最大耐用量(MTD)、および総合的な反応、進行までの期間、および全生存率について、この組み合わせのMTDにおける効果を判定することを含む。
【0073】
具体的には、第I相(加速用量増加相(accelerated dose escalation phase))の間は、加速増量法(accelerated titration design)を用いて、ロミデプシンのMTDを確認した。例えば、用量規定毒性(DLT)がなく、かつ2例よりも少ない患者が、第1サイクル(C1)において中程度の毒性である場合には、次の患者を1レベル上げて開始する。National Cancer Institute Common Toxicity Criteria(NCI−CTC)(3版)によれば、DLTは、次のように定義される。血小板数25×109/L未満、G−CSFサポートにもかかわらずグレード4の好中球減少、処置にもかかわらずグレード3または4の悪心、嘔吐、または下痢、他の任意のグレード3か4の非血液系毒性、または毒性に起因する4週間よりも長期の処置中断。加速相(accelerated phase)は、1人の患者がC1においてDLTを示すか、2人の患者が最初の処置サイクルの過程で「中程度」の毒性を経験したときに終了する。標準的な用量漸増デザインに従って、患者を3つのコホートに参加させた。最大6人の患者を任意の投薬量で処置した。MTDは、DLTの発生率が33%未満である最大投薬量と定義される。下記の表1に、一般的な用量漸増計画を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
MTDを決定した後、ボルテゾミブ−ロミデプシンの組み合わせの効果に関するさらなるデータを得るために、このMTDでの第II相において、さらに15人の患者を加える。
【0076】
加入可能な患者は、18歳以上で、再発性多発性骨髄腫にかかっており、最大4回までの治療歴のある者でなければならない。また、適格な患者は、計測可能な疾病を持ち、および、血小板数が50×109/l以上であり、血液ヘモグロビン(Hb)濃度が少なくとも75g/Lであり、好中球絶対数が少なくとも0.75×100/Lであり、かつ充分な肝臓および腎臓の機能をもつ必要がある。
【0077】
治験(trail)に適さない患者は、the National Cancer Institute Common Toxicity Criteria of Adverse Events(NCI−CTCAE)(3.0版)によって示された判定基準によれば、グレード3、またはそれよりも悪化している神経障害、またはグレード1、またはそれよりも強い疼痛を伴うグレード2の神経障害を有する者;心不整脈または活動性冠状動脈疾患の既往のある者;QTc間隔延長を起こす薬および/またはCYP3A4阻害剤など組み合わせ薬剤を使用する者などである。
【0078】
加入患者の特徴を下記の表2にまとめる。
【0079】
【表2】
【0080】
患者は全員、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目に1.3mg/m2用量のボルテゾミブ、1日目、2日目、4日目、5日目、8日目、9日目、11日目、および12日目に20mg用量のデキサメタゾンの投与を受けた。ロミデプシンの用量増加は、28日サイクルの1日目、8日目、および15日目に8mg/m2用量を静脈内に投与することから始まり、ロミデプシンの患者内用量漸増を伴う、加速用量増加相を含んでいた。
【0081】
この28日の誘導サイクルは、例えば、最大8サイクルまで反復することができる。2007年8月現在、患者に送達されるサイクル数の中央値は3回である。各個人が受けたサイクルの数は図11に要約されている。最終処置用量レベルの分布を図12に示す。
【0082】
現在までに、8mg/m2(n=1)または10mg/m2(n=3)というロミデプシン用量では、用量規定毒性が示されていなかった。12mg/m2のロミデプシン用量では、グレード4の血小板減少症のエピソードが3例、および発熱性好中球減少症のエピソードが1例発生している。注目すべきは、グレード4の血小板減少症患者のうちの2人が、本組み合わせを開始する前には、血小板数が100×109個/L以下であった(加入させるに当たっては、患者の血小板数は50×109/Lより大でなければならなかった)。
【0083】
観察されたその他の薬物関連毒性には以下のものがある:グレード3の疲労感(n=1);好中球減少(n=1);敗血症(n=1);グレード2の疲労感(n=1);末梢神経障害(n=2);悪心(n=1);および下痢(n=1)。末梢神経障害のために、2人の患者でボルテゾミブの減量が必要になった(これらの患者は、12mg/m2のロミデプシンを同時投与されていた)。表3に、薬物関連有害事象がまとめられている。
【0084】
【表3】
【0085】
ロミデプシンとボルテゾミブの組み合わせは、充分な忍容性が認められた。最大許容投与量は、処置用量レベル2、すなわち、1.3mg/m2用量のボルテゾミブ、20mg用量のデキサメタゾン、および10mg/m2用量のロミデプシンに相当している。表3に示されているように、血小板減少症がグレード3以上の毒性で最もよく見られる。血小板減少症の動態の例が図13に示されている。
【0086】
第3サイクル、第5サイクル、および第7サイクルの1日目、および各維持サイクルの1日目に反応を評価した。M−タンパク質応答基準に従って反応率(response rate)を評価し、完全な反応をBlood and Marrow Transplantation(EMBT)基準に従って記録した。
【0087】
表4は、本試験の応答結果をまとめたものである。患者には、免疫固定法陰性で完全寛解(CR)した者が1人、部分寛解(PR)した者が6人、またやや寛解(MR)した者が1人いた(図14も参照)。ほとんどの患者に併用療法を続けた。この臨床試験は、ロミデプシン(10mg/m2)とボルテゾミブ(1.3mg/m2)の用量で患者を追加しながら継続される。
【0088】
【表4】
【0089】
この臨床試験の結果は、ボルテゾミブとロミデプシンの組み合わせが、再発性/難治性の多発性骨髄腫において有望な応答率および持続的応答を示すことを示唆ている。
【0090】
(均等および範囲)
上記したものは、本発明のある非限定的で好適な実施形態の記載であった。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書で記載した本発明の具体的な実施形態に等価な多くのものを認識するかあるいは、確認することができる。当業者は、以下の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、この記載にさまざまな変更または改変を加えることができることを理解する。
【0091】
請求項において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対の指示があるか、または文脈から明確にそうでないことが分からない限り、一つまたは一つ以上を意味し得る。一つの群の一つ以上のメンバーの間に「or」が含まれている請求項または記載は、反対の指示があるか、または文脈から明確にそうでないことが分からない限り、その群のメンバーの一つ、一つ以上、または全部が、所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、またはそれに関連していても要件を満たすものみなされる。本発明は、群の一つだけのメンバーが、所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、または関連している実施形態を含む。また、本発明は、群のメンバーの一つ以上、またはすべてが所定の物または方法に存在しているか、使用されているか、または関連している実施形態も含む。さらに、当然ながら、本発明は、一つ以上の限定、要素、条項、記載用語などを、一つ以上の請求項から、または本明細書の関連箇所から、別の請求項に導入する、すべての改変、組み合わせ、および置換を包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本請求項に従属する別の任意の請求項に記載されている一つ以上の限定事項を含むように改変することができる。さらに、これらの請求項に組成物が記載されている場合には、別段の指示があるか、矛盾や不整合が生じることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている目的のいずれかのためにその組成物を使用する方法も含まれ、また、本明細書に開示されている作製法のいずれか、または当技術分野において既知の方法に従って組成物を作製する方法も含まれるものと理解される。さらに、本発明は、本明細書に開示されている組成物の調製法のいずれかに従って作製された組成物を包含する。
【0092】
構成要素が列挙されて示されている場合、例えば、マーカッシュ群形式で提示されている場合には、構成要素の各下位群も開示されており、その群から任意の構成要素(一つまたは複数)を削除することができると理解される。また、「含む」という用語は、限定するのではなく、さらなる要素または工程を含むことができる。一般的に、本発明または本発明の局面が、特定の要素、特徴、工程などを含むと言う場合、本発明のある実施形態または本発明の局面は、そのような要素、特徴、工程などからなるか、または実質的にそれらからなると理解されるべきである。便宜上、それらの実施形態は、本明細書において正確に引用されて、具体的に記載されているのではない。したがって、一つ以上の要素、特徴、工程などを含む、本発明の各実施形態について、本発明は、それらの要素、特徴、工程などからなるか、または実質的にそれらからなる実施形態も提供する。
【0093】
範囲が記載されている場合には、端点が含まれる。さらに、別段の記載がない限り、または文脈および/または当業者の理解するところから明確に別様でない限り、範囲で表現されている数値は、文脈上明らかに別段の記載がなされていない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで、記載された範囲内にある任意の具体的数値を、本発明の異なった実施形態において想定することができると理解される。また、別段の記載がない限り、または文脈および/または当業者の理解するところから明確に別様でない限り、範囲で表現されている数値は、その所定の範囲内の任意の部分的範囲を想定することができ、その部分範囲の端点も、その範囲の下限の単位の10分の1と同じ精度で表現されていると理解される。
【0094】
また、本発明の任意の具体的な実施形態を、任意の一つ以上の請求項から明示的に除外することができるものと理解される。任意の実施形態、要素、特徴、用途、または本発明の組成物および/または方法の局面を、一つ以上の請求項から除外することができる。例えば、本発明のある実施形態において、生理活性物質(biologically active agent)は抗増殖剤ではない。簡略を期すために、一つ以上の要素、特徴、目的、または局面が除外されている実施形態のすべてを本明細書において明示的に示すことはしない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効な量のロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを、癌またはその他の新生物を患う被検体に投与する工程を含む、被検体における癌またはその他の新生物を処置する方法。
【請求項2】
ロミデプシンが以下の化学式のものである、請求項1に記載の方法:
【化9】
。
【請求項3】
前記プロテアソームインヒビターが、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI−0052)、ラクタシスチン、エポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)、MG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)、PR−171、PS−519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP−1612、CVT−63417、PS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)、PSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)、MG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)、PS−273(MNLB)、オムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)、NLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)、YLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)、ALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)、3,4−ジクロロイソクマリン、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド、TMC−95A、グリオトキシン、EGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)、およびYU101(Ac−hFLFL−ex)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテアソームインヒビターがボルテゾミブ(登録商標VELCADE)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロテアソームインヒビターがピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート(PS−341)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロテアソームインヒビターがサリノスポラミドA(NPI−0052)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロテアソームインヒビターがPR−171である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が血液系細胞の悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記癌がリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が非ホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記癌がホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記癌が末梢T細胞リンパ腫(PTCL)である、請求項1に載の方法。
【請求項15】
前記癌がリンパ増殖性悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が多発性骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が形質細胞由来の癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記癌が急性リンパ性白血病(ALL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記癌が固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記癌が前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が再発した癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が難治性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記癌がボルテゾミブ(登録商標VELCADE)抵抗性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記癌がステロイド抵抗性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記癌がデキサメタゾン抵抗性多発性骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約0.5mg/m2から約28mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約1mg/m2から約15mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約4mg/m2から約15mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約8mg/m2から約14mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約4mg/m2から約10mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約8mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約10mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約12mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約14mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.1mg/m2から約5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項38】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.5mg/m2から約3mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項39】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約1mg/m2から約2.5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項40】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.75mg/m2から約2mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項41】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.75mg/m2から約1.5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項42】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.5mg/m2から約1.25mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項43】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約1.3mg/m2である、請求項4に記載の方法。
【請求項44】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が4mg/m2から15mg/m2の範囲であり、前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が0.5mg/m2から3mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項45】
ロミデプシンまたはボルテゾミブのそれぞれが、それぞれが単独で投与されるときよりも低い投与量で組み合わせて投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項46】
前記組み合わせて投与されるロミデプシンおよびボルテゾミブの投与量がともに、前記それぞれが単独で投与される投与量よりも低い、請求項4に記載の方法。
【請求項47】
別の抗腫瘍性剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
細胞傷害性剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
ステロイド剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記ステロイド剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、ならびにこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ステロイド剤がプレドニゾロンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
デキサメタゾンが、0.25mgから100mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
デキサメタゾンが、5mgから60mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
デキサメタゾンが、10mgから50mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
デキサメタゾンが、約40mgの用量で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
デキサメタゾンが、約20mgの用量で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
ロミデプシンおよび前記プロテアソームインヒビターが静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記ロミデプシンおよび前記プロテアソームインヒビターのそれぞれが、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
ロミデプシンが週1回投与され、かつ前記プロテアソームインヒビターが週2回投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ステロイド剤が、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
前記ステロイド剤が、前記ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターとともに投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターの投与前または投与後に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項64】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターを投与する5日から7日前に投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
治療上有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを、多発性骨髄腫を患う被検体に投与する工程を含む、被検体における多発性骨髄腫を処置する方法。
【請求項66】
前記治療上有効な量のロミデプシンが4mg/m2から15mg/m2の範囲である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記治療上有効な量のロミデプシンが8mg/m2から10mg/m2の範囲である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が0.5mg/m2から3mg/m2の範囲である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が約1.3mg/m2である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記治療上有効な量のロミデプシンが8mg/m2から10mg/m2の範囲であり、前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が約1.3mg/m2である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
ロミデプシンが週1回投与され、かつボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が週2回投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ステロイド剤を投与する工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記ステロイド剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、もしくはこれらの合成類似化合物、またはこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記ステロイド剤がプレニゾロンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
デキサメタゾンが、0.25mgから100mgまでの用量範囲で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
デキサメタゾンが、約40mgの用量で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
デキサメタゾンが、約20mgの用量で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記ロミデプシンおよび前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)のそれぞれが、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
ロミデプシンが週1回投与され、かつ前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が週2回投与される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ステロイド剤が、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
前記ステロイド剤が、前記ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)とともに投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の投与前または投与後に投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項84】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する5日から7日前に投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項85】
ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を組み合わせて細胞に投与する工程を含む、細胞を処理する方法。
【請求項86】
前記投与する工程が、ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を組み合わせて、細胞を死滅させるのに十分な濃度で該細胞に投与する工程を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPからなる群から選択される抗アポトーシスタンパク質をアッセイする工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
JNK経路のタンパク質をアッセイする工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞が癌細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞が癌細胞株に由来している、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞が原発癌に由来している、請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞が齧歯動物細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞がヒト細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞がボルテゾミブ(登録商標VELCADE)に抵抗性である、請求項85に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞が、ステロイドによる処理に不応性である、請求項85に記載の方法。
【請求項97】
細胞におけるJNK経路を活性化するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞におけるJNK経路を活性化する方法。
【請求項98】
ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約100nMの範囲である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約10nMの範囲である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
細胞におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質を下方制御するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質を下方制御する方法。
【請求項101】
デプシペプチドおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約100nMの範囲である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
デプシペプチドおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約10nMの範囲である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項104】
前記細胞がCD138+細胞である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
細胞においてカスパーゼ−12の切断を誘導するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞においてカスパーゼ−12の切断を誘導する方法。
【請求項106】
細胞において抗アポトーシスタンパク質の発現低下をもたらす量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞において抗アポトーシスタンパク質の発現を低下させる方法。
【請求項107】
前記抗アポトーシスタンパク質が、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPからなる群から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
治療上有効な量のロミデプシンおよび治療上有効な量のボルテゾミブを含む、癌を処置するための医薬組成物。
【請求項109】
前記ロミデプシンおよびボルテゾミブが別々にパッケージされている、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項110】
前記ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの量が、癌を処置するために単独で用いられる該薬剤の量よりも少ない、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項111】
前記癌が多発性骨髄腫である、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項112】
前記癌がCLLである、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項113】
請求項108に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項114】
請求項108に記載の医薬組成物を複数の投薬単位で含む、請求項113に記載のキット。
【請求項1】
治療上有効な量のロミデプシンおよびプロテアソームインヒビターを、癌またはその他の新生物を患う被検体に投与する工程を含む、被検体における癌またはその他の新生物を処置する方法。
【請求項2】
ロミデプシンが以下の化学式のものである、請求項1に記載の方法:
【化9】
。
【請求項3】
前記プロテアソームインヒビターが、ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)、ペプチドボロン酸、サリノスポラミドA(NPI−0052)、ラクタシスチン、エポキソミシン(Ac(Me)−Ile−Ile−Thr−Leu−EX)、MG−132(Z−Leu−Leu−Leu−al)、PR−171、PS−519、エポネマイシン、アクラシノマイシンA、CEP−1612、CVT−63417、PS−341(ピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート)、PSI(Z−Ile−Glu(OtBu)−Ala−Leu−al)、MG−262(Z−Leu−Leu−Leu−bor)、PS−273(MNLB)、オムラリド(clasto−ラクタシスチン−β−ラクトン)、NLVS(Nip−Leu−Leu−Leu−ビニルスルホン)、YLVS(Tyr−Leu−Leu−Leu−vs)、ジヒドロエポネマイシン、DFLB(ダンシル−Phe−Leu−ボロネート)、ALLN(Ac−Leu−Leu−Nle−al)、3,4−ジクロロイソクマリン、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド、TMC−95A、グリオトキシン、EGCG((−)−エピガロカテキン−3−ガレート)、およびYU101(Ac−hFLFL−ex)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロテアソームインヒビターがボルテゾミブ(登録商標VELCADE)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プロテアソームインヒビターがピラジルカルボニル−Phe−Leu−ボロネート(PS−341)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロテアソームインヒビターがサリノスポラミドA(NPI−0052)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロテアソームインヒビターがPR−171である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が血液系細胞の悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記癌がリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記癌が非ホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記癌がホジキンリンパ腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記癌が皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記癌が末梢T細胞リンパ腫(PTCL)である、請求項1に載の方法。
【請求項15】
前記癌がリンパ増殖性悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記癌が多発性骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記癌が形質細胞由来の癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記癌が慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が急性骨髄性白血病(AML)である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記癌が急性リンパ性白血病(ALL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記癌が固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記癌が前立腺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が再発した癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記癌が難治性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記癌がボルテゾミブ(登録商標VELCADE)抵抗性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記癌がステロイド抵抗性癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記癌がデキサメタゾン抵抗性多発性骨髄腫である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約0.5mg/m2から約28mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約1mg/m2から約15mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約4mg/m2から約15mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約8mg/m2から約14mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約4mg/m2から約10mg/m2の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約8mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約10mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約12mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が約14mg/m2である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.1mg/m2から約5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項38】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.5mg/m2から約3mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項39】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約1mg/m2から約2.5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項40】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.75mg/m2から約2mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項41】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.75mg/m2から約1.5mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項42】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約0.5mg/m2から約1.25mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項43】
前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が約1.3mg/m2である、請求項4に記載の方法。
【請求項44】
前記ロミデプシンの治療上有効な量が4mg/m2から15mg/m2の範囲であり、前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の治療上有効な量が0.5mg/m2から3mg/m2の範囲である、請求項4に記載の方法。
【請求項45】
ロミデプシンまたはボルテゾミブのそれぞれが、それぞれが単独で投与されるときよりも低い投与量で組み合わせて投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項46】
前記組み合わせて投与されるロミデプシンおよびボルテゾミブの投与量がともに、前記それぞれが単独で投与される投与量よりも低い、請求項4に記載の方法。
【請求項47】
別の抗腫瘍性剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
細胞傷害性剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
ステロイド剤を投与する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記ステロイド剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、ならびにこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ステロイド剤がプレドニゾロンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
デキサメタゾンが、0.25mgから100mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
デキサメタゾンが、5mgから60mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
デキサメタゾンが、10mgから50mgまでの用量範囲で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
デキサメタゾンが、約40mgの用量で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
デキサメタゾンが、約20mgの用量で投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
ロミデプシンおよび前記プロテアソームインヒビターが静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記ロミデプシンおよび前記プロテアソームインヒビターのそれぞれが、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
ロミデプシンが週1回投与され、かつ前記プロテアソームインヒビターが週2回投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ステロイド剤が、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項62】
前記ステロイド剤が、前記ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターとともに投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項63】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターの投与前または投与後に投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項64】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記プロテアソームインヒビターを投与する5日から7日前に投与される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
治療上有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを、多発性骨髄腫を患う被検体に投与する工程を含む、被検体における多発性骨髄腫を処置する方法。
【請求項66】
前記治療上有効な量のロミデプシンが4mg/m2から15mg/m2の範囲である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記治療上有効な量のロミデプシンが8mg/m2から10mg/m2の範囲である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が0.5mg/m2から3mg/m2の範囲である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が約1.3mg/m2である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記治療上有効な量のロミデプシンが8mg/m2から10mg/m2の範囲であり、前記治療上有効な量のボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が約1.3mg/m2である、請求項65に記載の方法。
【請求項71】
ロミデプシンが週1回投与され、かつボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が週2回投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ステロイド剤を投与する工程をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記ステロイド剤が、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、安息香酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸ベタメタゾン・リン酸ベタメタゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ピバル酸クロコルトロン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、酢酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酪酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、シピオン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、リン酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、コハク酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾールナトリウム、吉草酸(ヒドロコルチゾン)コルチゾール、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、フランカルボン酸モメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、およびトリアムシノロンヘキサアセトニド、もしくはこれらの合成類似化合物、またはこれらの組み合わせ物からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記ステロイド剤がプレニゾロンである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ステロイド剤がデキサメタゾンである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
デキサメタゾンが、0.25mgから100mgまでの用量範囲で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
デキサメタゾンが、約40mgの用量で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
デキサメタゾンが、約20mgの用量で投与される、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記ロミデプシンおよび前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)のそれぞれが、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
ロミデプシンが週1回投与され、かつ前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)が週2回投与される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ステロイド剤が、2か月に1回、月1回、3週間に1回、2週間に1回、週1回、週2回、週4回、1日1回、またはさまざまな間隔で投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
前記ステロイド剤が、前記ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)とともに投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)の投与前または投与後に投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項84】
前記ステロイド剤が、ロミデプシンまたは前記ボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を投与する5日から7日前に投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項85】
ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を組み合わせて細胞に投与する工程を含む、細胞を処理する方法。
【請求項86】
前記投与する工程が、ロミデプシンおよびボルテゾミブ(登録商標VELCADE)を組み合わせて、細胞を死滅させるのに十分な濃度で該細胞に投与する工程を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPからなる群から選択される抗アポトーシスタンパク質をアッセイする工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
JNK経路のタンパク質をアッセイする工程をさらに含む、請求項85に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞が癌細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項90】
前記細胞が癌細胞株に由来している、請求項85に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞が原発癌に由来している、請求項85に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞が齧歯動物細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記細胞がヒト細胞である、請求項85に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞がボルテゾミブ(登録商標VELCADE)に抵抗性である、請求項85に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞が、ステロイドによる処理に不応性である、請求項85に記載の方法。
【請求項97】
細胞におけるJNK経路を活性化するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞におけるJNK経路を活性化する方法。
【請求項98】
ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約100nMの範囲である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約10nMの範囲である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
細胞におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質を下方制御するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞におけるNF−κB依存性抗アポトーシスタンパク質を下方制御する方法。
【請求項101】
デプシペプチドおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約100nMの範囲である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
デプシペプチドおよびボルテゾミブのそれぞれの濃度が、約1nMから約10nMの範囲である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
細胞においてアポトーシスを誘導するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞においてアポトーシスを誘導する方法。
【請求項104】
前記細胞がCD138+細胞である、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
細胞においてカスパーゼ−12の切断を誘導するのに有効な量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞においてカスパーゼ−12の切断を誘導する方法。
【請求項106】
細胞において抗アポトーシスタンパク質の発現低下をもたらす量のロミデプシンおよびボルテゾミブを投与する工程を含む、細胞において抗アポトーシスタンパク質の発現を低下させる方法。
【請求項107】
前記抗アポトーシスタンパク質が、A1、Bcl−xL、XIAP、cIAP1、ICAM−1、およびc−FLIPからなる群から選択される、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
治療上有効な量のロミデプシンおよび治療上有効な量のボルテゾミブを含む、癌を処置するための医薬組成物。
【請求項109】
前記ロミデプシンおよびボルテゾミブが別々にパッケージされている、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項110】
前記ロミデプシンおよびボルテゾミブのそれぞれの量が、癌を処置するために単独で用いられる該薬剤の量よりも少ない、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項111】
前記癌が多発性骨髄腫である、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項112】
前記癌がCLLである、請求項108に記載の医薬組成物。
【請求項113】
請求項108に記載の医薬組成物を含むキット。
【請求項114】
請求項108に記載の医薬組成物を複数の投薬単位で含む、請求項113に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−516767(P2010−516767A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547278(P2009−547278)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/000850
【国際公開番号】WO2008/091620
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509181275)グラスター ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/000850
【国際公開番号】WO2008/091620
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(509181275)グラスター ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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